スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ2)

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「遅くなったこと怒ってないの？」

「仕事だもん。しょーがないもん。」

じゃあ何が気に食わないのか、

彼が拗ねてる理由がよくわからなくて

「…私なんか他に悪いことしたかな？」

俯く顔を覗き込むと、

「Aさん、こないだ俺が言ったこと聞いてた？」

紫耀くんは少しだけ顔をあげて、

「22時過ぎるんやったら、迎えに行けるかもだから一回連絡してって言ったよね？」

チラッと一瞬私を見ると、
また顔を伏せた。

確かに、
この間近くで物騒な事件があって(帰宅中の女性が襲われる的な)
そのニュースを見ていた紫耀くんが
「Aさんも危ない！」って大騒ぎしてそんなこと言ってたっけ。

その時は「ありがとう、そうするね」なんて言ったけど

こう見えて、いや、顔を見れば完全に
彼は今をトキメクスーパーアイドルの平野紫耀であって、

彼より５つも歳の離れた私なんかのお迎えのために
写真撮られちゃったりなんてしたら……

考えるだけで背筋が凍る。

「紫耀くんの気持ちは嬉しいんだけどね、やっぱり駅とか人の多いところに2人で行くのってまずいと思うの。」

もちろん、本音は私を心配してそう言ってくれたのが嬉しかったし

何も考えなくていいならお迎えにも来て欲しい。

でも今は、

そんなことで崩したくないほど大切なこの時間を
守らなくちゃならなくて

「じゃあせめて電話だけでもしてよ。出れる時は出るから、話しながら帰れば俺も安心」

「わかったそうするね。今日はごめんね？」

私がそう言うと笑顔になった紫耀くん。

「子供扱いせんといて！」って怒る時もあるけど
サラサラの前髪を撫でたら、今日は怒らず嬉しそうな顔をした。