31→馬鹿げた願望 ページ32
「(あわよくば、君の隣に……なんてね…)」
それ夢じゃなくて無くただの願望かな。
ふと考えてしまった事を自分で否定する。
何だか虚しいなと思いつつ私は椅子へと座る。
その直後、コンコンッと扉をノックする音が聞こえた。
相澤先生だろうか？言い忘れた事でもあったのかな…
そう思いながらも入って良いですよと返事をする。
すぐにガララッと言う扉を開ける音がして振り向く。
そこには……
「と、轟君…？」
ついさっき、思い出していた君が居た。
「どうしたんですか？もしかして怪我…とか」
突然の来訪に驚き戸惑いながらもそれを表に出さない様に対応する。
しかし怪我と聞いたものの特に異常は見られない様な…
「怪我じゃ無え」
「？では何で…」
最初の一言は見事に否定されて私の疑問は大きくなる。
だが轟君が私の言葉を遮って差し出した物に一瞬で萎んだ。
「私のペン？」
好きなデザインと言うだけで買ったボールペン。
それと同じ物が轟君の掌にはあった。
私はそれを見て思わず胸ポケットに手を当てる。
「あれ、無い…」
しかしそこには何時もの固い感触が無い。
視線を移すとそこにはやはりボールペンが無かった。
「やっぱ落としてたんだな」
轟君は私の様子を見てそう確信した様に言った。
じゃあ、拾ってくれたのは轟君…？
「有難う、ございます…」
まるで恋愛小説の様な展開で現実味が無くて…
呆気に取られながらもそれを受け取る為に手を差し出す。
「もう落とすなよ」
「は、はい。」
その際に少しだけ指先が触れてドキッと胸が高鳴る。
それにしても何で私のだって判ったんだろう…
「？」
「ぁ…いえ……」
ふと浮かんだ疑問に轟君を凝視してしまい彼はそれに気づく。
…うん、こんな事聞いたら自意識過剰に思われるよね。
「何でも無いです。」
そんな疑問を心の奥底へと仕舞い込み笑ってみせた。
不思議と頬が緩むのは君がここに居る理由が私だから。
そう、結局は身勝手な優越感に浸っているのだ。
でも恋ってそう言うものだと思ってしまう自分も居るんです…
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作者名：自宅警備員先生 | 作成日時：2017年10月16日 18時
