127話 -霊- ページ34
もう放っておいても自分で動けるであろう三人を置いて、私は別の場所へ向かう。
途中、乙骨が倒れているのを見つける。
その近くには夏油の残穢があったので、これを辿る。
「…どこに行くつもり?」
飛ばずに歩いていると、後ろから声を掛けられる。
「うろうろするだけ」
「ふーん」
目隠しをしていない五条は、今更私のことを気にするわけでもなく学生たちの方へ歩いて行った。
六眼ほんとに綺麗なんだよなあ。
本気で宇宙を瞳に貼り付けたような、透き通る飴玉のような目。ちょっと欲しい。幻影旅団ではない。
「…いたいた」
壁にもたれて腰を下ろしている、もう“中身”の無い夏油の体。
ただ私はそっちではなく、その体を見下ろす“中身”の方に目を向けた。何を考えているのか、表情は無い。
「ねぇ今どんな気持ち?」
「……?」
霊となった夏油は不思議そうに私を見る。
少し見つめ合って状況を飲み込んだのか、細い目を見開く。
おうおう存分にびっくりしやがれ。
「君は霊も見えるのか…!」
「当然の反応だけど、その前に
今の夏油はナナミンに憑いていた灰原くんのように死んだ時の姿をしているため、とても見てられるものじゃない。
身体中傷だらけなのは勿論のこと、右腕が吹き飛んだように肩から無くなっている。
こんなん夜中に見たら泣き叫ぶ。殴り飛ばす。
「…こうかな?」
「おお、出来るんだ」
少し目を瞑ったと思えば、いつもの教祖夏油様に戻った。
よかった普通だ。
じゃあ灰原くんも出来るってことか…
「で、本題。夏油はこれからどうしたい?」
指を二本立てる。
「一つは、このまま成仏する。
霊って未練があると成仏出来ないみたいな話があるけど、もしそうだとしても私が強制的に成仏させられる。というか、消すというか…」
夏油は少し眉をひそめた。
成仏するのは嫌そう。
なので、次の選択肢を提示する。
「もう一つは、満足出来るまで私に憑く。
こんな終わり方して、未練たらったらでしょ?
私はそこまで協力できないけど、この世界の行く末を見届けるくらいは付き合うつもりだよ」
途中までなら私は知ってるけど。
夏油は少し唸って、もう一度自分の亡骸を見た。
「…そうだね。もう私には何も出来ないのが残念でならないが、皆の選択によって世界がどうなるのか…興味がある」
「ふふ。じゃあ契約成立だ」
そう言って夏油の手を取った。
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翡翠(プロフ) - とぅにさん» なんのことかと一瞬考えましたが吉田ですねwwちょくちょく別作品キャラおります。 (7月3日 2時) (レス) @page22 id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
とぅに(プロフ) - ヒロフミくん出てきてびっくりしました☺️☺️ (7月2日 23時) (レス) @page21 id: 76d074d926 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 水泳進化人さん» コメントありがとうございますm(_ _)m返信遅れて申し訳ないです。自分が読みたかった話を書いて、好きだと伝えてくださる方が多く、私と同じ方が他にもいたんだなととても嬉しく思います…!! (2022年3月3日 20時) (レス) id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
水泳進化人(プロフ) - 好きです。 (2022年2月25日 14時) (レス) @page40 id: 30ca69ad2f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 雪さん» コメントありがとうございますm(_ _)mとても嬉しいです! (2022年2月7日 22時) (レス) id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2022年2月3日 2時