ドS彼氏な激重先輩【乙骨憂太】

過去 ページ29

「ふぅ.......」





共有スペースでポッキーを食べながらスマホを覗く。



写真ホルダーを指で何度もスワイプして、2年前まで遡った。




そこに写っているのは楽しそうに自撮りしている私と涼の姿。



見れば見るほど胸が苦しくなっていく。





「.....もういいよね。みんなも忘れるべきって言ってるんだし」





覚悟を決めて、削除ボタンを押した。



それ以外の涼が写っているものも全て。




私が好きなのは乙骨先輩だけ。それは何があっても揺るぎない。



だから、幼馴染でいられない以上は......抹消するべきだよね。




いざ消してみたら、なんだか気持ちが楽になった気がした。





「ん.....？なんだこれ」





そんな時に届いた1件の通知。



”登録しているチャンネルの動画が投稿されました！”と書かれている。




私、登録したチャンネルなんてあったっけ。



最近動画なんて見てないと思うけど......




そんなこと思いながらも、気になって動画を開く。





「.......え゛、」





サムネイルでは、クールなイケメンキャラが頬を赤らめている。



そして大きく書かれたタイトルは『年上男子からの指パチ調教』というもの。




あ、これもしかして―――





「Aちゃんが動画見てるなんて珍しいね。何見てるの？」





後ろから乙骨先輩の声が聞こえる。



いつの間にかスマホとイヤホンの片方を取られていて、動画の再生ボタンを押されていた。





『ほら、こっち見て』



　ﾊﾟﾁﾝｯ



『.....すごく気持ち良さそうな顔してるね』





途端にスマホから流れ出す甘い声。



乙骨先輩は真顔でその音声を聞き続けている。





「......僕じゃ物足りなかった、ってこと？」



「ち、違うんです！これは多分、私が中学生の時に聞いてたもので.....」



「中学生の時に？」



「はい。私、初恋が乙骨先輩なので、恋愛経験とかずっとなくて......その.....」



「こういうシチュエーションボイスみたいなの聞いて、疑似恋愛してたっていいますか......」





顔を赤らめながら恥ずかしい過去を暴露する。



言いたくなかった.....こんなこと........

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