【ヒプマイ】F.P&麻天狼の女限定【短編集】

レンズ越しのキス【飴村乱数】 ページ10

雨が降り続く日。洗濯物が干せないとボヤく私の側では乱数くんが黙々と仕事をしていた
いつも綺麗に整える髪も無造作に後ろに撫でつけ、彼の小さな顔には少し大きな黒縁のメガネがかけられている
レンズの向こうのアイスブルーの瞳は睨みつけるように細められていて、それでもそんな顔も可愛らしいのが羨ましい
洋服と向き合う乱数くんが実は一番好きだったりする。細められた目も、視線とは対象的に優しく布を縫い付けていく綺麗な手つきも、

「そんなに見られたら顔に穴が空いちゃいそう」
「あ、ごめん。思わず」

綺麗な青の瞳と目が合ってドキリとした
私の言葉にどこか飽きれたように微笑んで、小さく息を吐き、その手を休める

「休憩？」
「ん、なんか飲みたい」
「おっけーです。コーヒーでいい？」
「うん」

きっと今の疲れ切った彼にはカフェオレがいいんじゃないか。疲れてる時には甘いものが良い
そう思った私が立ち上がると何を勘違いしたのか、乱数くんが私を引き留めるように抱きしめた

「…どこいくの」
「乱数くんにコーヒー入れようと思って」
「……一緒に行く」

何故か2人ぴったりとくっつきながらキッチンへたどり着く
彼氏が後ろから抱きついて、彼女の方はそのままカップにコーヒーを注ぐ
なんてバカップルなんだろうか
透き通るような黒色にミルクを注いで砂糖を入れる、カップを後ろでひっつき虫のように抱きつく乱数くんに渡せばくぴくぴと喉に流し込む音が聞こえた

「おいしい」
「星いくつ？」
「星五つ！！」

ありがとう、とぎゅっと抱きしめられくすぐったい気持ちになる
桃色の髪を撫でると手に頬がすり寄せられた

「仕事終わったら膝枕して」
「それだけでいいの？」
「…体力のあるときにベッドで、ね」

耳元で掠れた声が囁いて温もりが背中から離れる
カップをシンクに置いた乱数くんは、少し背を屈めて私にキスをひとつ落とした

「コーヒーの味がする、大人な乱数くんだ」
「いつもは子供っぽいってこと？」
「ち、違うよ！」

拗ねてしまった乱数くんにキスをして、また乱数くんも私にキスをする
…相当仕事に戻るのが面倒くさくなってきたようだ
このままでは終わらないので仕方なく私が手を引き、仕事場まで2人で手を繋いで歩くのだった

終わり ログインすれば
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