【ヒプマイ】F.P&麻天狼の女限定【短編集】

好きな人の話をする【麻天狼Ver.】 ページ9

【神宮寺寂雷】
それでね先生、と嬉々として話した私の唇が冷たい指先に塞がれた
どうして悲しそうな顔を、寂雷先生はしているんだろう。切なげな瞳に私も胸が苦しくなる
「…困った口だ」
先生？と首を傾げる私に微笑みを向けて寂雷先生はそっと指を離した
「君にとって、居心地のよい関係は望んでいたけど…こんな形で叶うなんてね」
「先生？」
「私があなたともっと早く出会っていたら、少しは変わっていたのだろうか」
言葉の意味を察した私はそれ以上何も言えず、先生の寂しげな瞳を見つめる
同情なのか、はたまた愛情なのか。近づいた唇を拒まず受け止める、悲しいキスだった


【伊弉冉一二三】
また彼氏に振られた、そう泣きじゃくる私の涙を止めてくれるのはいつも一二三くんだった
独歩くんのためにも栄養のある食事を作ったり、きっと大変なのに。だから
「私、次は絶対、もっと素敵な彼氏つくる！！一二三くん離れするから！」
私の意気込みに目を丸くした一二三くんは、どうしてか私の腕を掴む。強い力に驚いていると悲しそうな笑顔がそこにあった
「次の彼氏、俺じゃ駄目？」
「え？」
「…俺は、絶対に泣かせないから」
一二三くんは私を抱き寄せて、恐る恐ると頬にキスを落とす
泣きそうに揺れた目を見たら、迫った唇を拒むことはできなかった


【観音坂独歩】
先輩に彼女がいたと泣きわめく私とは対照的に、独歩くんの頬は血色良く色づき、鬱々としたいつもの表情は溢れんばかりの笑顔だった
「…いい事あったの？」
「すごくいい事あった」
「いいな…私はどん底だよ」
ぐびっと缶ビールを飲み干し溢れる涙をそのままに枝豆をかじる
「…はぁ、次はもっと素敵な人探さないと」
「……身近な男とか、どうなの」
「身近？うーん…でも確かに高望みするよりもいいかも、しれないね？」
「…！！」
なぜかさらに独歩くんの笑みがキラキラした
た、例えば？と前のめりになった独歩くんと距離が近づき少し胸がなる
「た、例えば…うーん」
「…っ」
「一二三くんとか？女の子の気持ち分かってくれそうだし、私にだけは女性恐怖症の症状でないから付き合いには支障なさそうだし、」
「……………そっちか」
あ、キラキラがどんよりになった
その様子を黙って見ていた一二三くんが「独歩かわいそー」とにやつく意味も、分からなかった

レンズ越しのキス【飴村乱数】→←好きな人の話をする【F.PVer.】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す