攫って、愛して【灰谷竜胆】

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「……裏切るなら即スクラップ。
だが、そうでないのならお前は仲間だ。」

ボスは、私が言わんとしていたことを全て汲んでいるようだった。それは欲しかったような、欲しくなかったような、複雑な胸中。



頬に流れるものは雨か、それとも。
お前はもう少し人間らしくなれ、なんて手を差し伸べられ、その手は温かかった。










「遅ぇじゃん。てかびしょ濡れだし。」

アジトへと戻ると、1番初めに出迎えてくれるのはやっぱりこの人で。








「ごめ、ごめん、ね…。」

心配をかけて、そんな顔をさせて。

泣きじゃくる私を「お前、泣けるんだな」なんて、濡れるのも構わずに抱きしめる彼。




「体すげぇ冷えてる。風呂入ってこいよ。」

「……竜胆も一緒に、」

「馬鹿。それは無理。」

鈍感な所は変わんねーのな、なんて頭を撫でられる。






まだまだ、機械的な情緒。
だけど、確実に私の中で何かが変わりつつあった。





◇
◇




翌朝。



「…さむ、」

異常なまでの寒気、
手元の体温計に表示された38.5°C。
平熱が35°C代の私にとってその数字は恐怖そのもの。

体に鞭を打って九井さんに体調不良で休ませてほしい旨を伝えに行ったのに、返ってきたのは


「んなもん電話かメッセージで済ませろ。
早く戻れ。移る…。」

という辛辣なものだった。
酷すぎる。心配をする一言もくれないだなんて。





あぁ、忘れてた。彼が潔癖だということを。

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