21 ページ21
．
結局、竜胆はあの場で1人残らず始末してしまった。
一旦ビルから出たが、何となく嫌な感じがして戻るとセキュリティが強化されていたためやはりな、と思いボスに連絡し、了承を得た上でのことだと。
情報は全て盗んだし、梵天に損失は特にない。
しかし私のせいで穏便に済ませるというのが台無しになってしまった。
「ごめん、竜胆…本当ごめんなさい。」
「は？お前が謝ることじゃねーだろ。」
むしろ悪かった、嫌な思いさせて。なんて、
いくら謝っても彼はそう言うばかりだった。
◇
◇
「ごめん、先に帰ってて。」
「は？どこ行くんだよ。」
「…1人になりたいの。お願い。」
迎えの車を待つ間、形容しがたい感情で頭の中が埋め尽くされた私は彼に背を向け歩き出す。
1人になりたいと、そう言えば彼は無理には追ってこなかった。
10分ほど歩いた先にあった人気の少ない路地裏。
物騒なのに、どこか落ち着くような空間。
ようやく座り込み、溜息をひとつ。
調子が狂う、と言えば分かりやすいだろうか。
何をされても平気だった、何とも思わなかった。
壊されて壊されて壊されて。されるがままだった。
もはや人間として扱われないことが普通だったのに。
生きていたくなかったのに。
なんの感情も持たなくなったはずなのに。
下劣な笑みで組み敷かれた時、
私は確かに嫌悪感を抱いた。
誰か助けてくれないか、と思ってしまったんだ。
「わかんない、わかんないや。」
雨が降り出して髪を濡らす。
しばらくして少し体冷えてきてもなお、そこから動こうとしない私に足音が近づいて、傘を差し出したのは。
「風邪ひくぞ。」
「…………ボス、なんで、」
相変わらず隈がひどくて、少し病的で。
右手に傘、左手には彼の好物のたい焼き。
なんともアンバランスな光景だ。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 652人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
睡魔ちゃん(プロフ) - チョコプリンさん» こちらにもコメントをくださりありがとうございます。とても嬉しいです。いつか番外編のようなものが出せたらいいなと思っています！！ (2022年2月18日 23時) (
レス) id: 0343b2f4d3 (このIDを非表示/違反報告)
チョコプリン(プロフ) - コメ失礼致します💦好きな子を一途に大切に思っている竜胆に惚れました…いい味出して下さるお兄様も最高です🥰素敵な作品をありがとうございます！ (2022年2月15日 11時) (レス) id: e53e09d499 (このIDを非表示/違反報告)
肯定ぺんぎん(プロフ) - 睡魔ちゃんさん» 睡魔ちゃん様が私のお話を読んで頂いていたとは…感無量です！！身に余るお言葉、本当に嬉しいです。新作、早速お気に入りさせて頂きました！更新お互い頑張りましょうね！ (2022年2月6日 22時) (レス) id: c944845778 (このIDを非表示/違反報告)
睡魔ちゃん(プロフ) - 肯定ぺんぎんさん» はじめまして、コメントありがとうございます！貴方様のお話、読ませていただいております！私とは比べ物にならないくらいの語彙力と表現力に仰天しました。お互い執筆頑張りましょうね！ (2022年2月5日 19時) (レス) id: af7842152a (このIDを非表示/違反報告)
肯定ぺんぎん(プロフ) - 睡魔ちゃん様、はじめまして。初コメ失礼いたします。最初からずっと読ませて頂いておりました。まっすぐ愛してくれる竜胆に心を溶かされました…素晴らしい作品に出会えて嬉しいです。完結お疲れ様です！次作も楽しみにしております！ (2022年2月5日 11時) (レス) @page30 id: c944845778 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：睡魔ちゃん | 作成日時：2022年1月19日 20時
