孤独の氷刃２

story57. ページ9

「わぁ…！素敵なところで、す…ね…っくしゅんっ！！」

「カ、カムイ様ぁ大丈夫ですかっ？」

「う…平気です…。少し肌寒くて…」


カムイ様がマントで自身を覆い隠すようにして縮こまっていた。

部族の中は、それまでの道とは格の違う寒さ。

民家に入ればまだしも、ここはまだ入り口だ。

寒さで半ば意識を失いそうな者、薄着なせいで風邪をひきかける者。

様々だった。


ここで弱らせておけば、有利になるかもしれないと少し考えたが、やめておく。

勘の良いものに気づかれれば意味がない。


「カムイ様。しばしお待ちください。私が今…呼んで参りますので」

「は、はい…。わかりました…うう」


カムイ様はリリスを抱きながら弱々しく返事をした

その場を後にし、私は部族の…父と過ごした私たちの家へと向かう。

予定では、そこに皆が集まってくれているはず。

戦う力を持たぬ者は、民家にいる。

人がいないと疑うだろうが、これならカムイ様たちにも気づかれまい。


「…遠いわね」


この吹雪は慣れたものだが、やはり歩きづらい。

おまけに湖が存在するため、回り道をしなくてはならなかった。

これでは時間がかかる。

余計な手間を省くため、私は回り道をすることなくそのまま湖へ向かった。


「…ふっ！」


水面に足をつけ、意識を集中させれば、そこには一筋の氷の道ができる。

それを反対の岸まで繋げ、滑って行った。

シュルシュルと、靴底が音を立てる。

かなりのバランスゲームだが、部族の力を使えばこんなものどうということはない。


勢いよく飛び降り湖に張った氷を解けば、それは初めからなかったかのように水となった。

目の前には私たちの家。

迷わず飛び込んだ。


「待たせてしまったわね。…父さんの敵討ちよ」


ーーー


「あ、姉さん！！部族のみんなもっ」


フェリシアが満面の笑みで私たちを迎える。

彼女も部族の一員。寒さは感じないのだ。


「……おい、フローラ。なんでそいつらは武装なんかしてるんだよ」

「……」


ジョーカーは不審がってそう言った。

もう…隠す必要はない。


「…裏切り者を始末するためよ」

「…！」

「裏切り者のカムイ様とその臣下たち…。および白夜軍を…ここで始末します！」

「どういうことだ！」


フェリシアは訳がわからないといったように、首を振って訴える。


「姉さんっ…何かの冗談ですか！？」


泣きそうな表情で叫んだ彼女に私は答えず…

ただ、白夜軍に荒れ狂う吹雪をぶつけた。

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