孤独の氷刃２

story82. ページ35

黒い王城。

王の間。玉座に座る王。跪く騎士。

暗夜王城なのだろうか。


王と騎士の顔には見覚えがあった。


「ガロン王と…ギュンター！？」


よくよく見てみれば、2人ともまだ若い。

ガロン王はギュンターに、なにか赤い液体の入ったグラスを手渡す。

そしてそれを飲めと、命令した。


ギュンターは断る。

ガロン王は激怒した様子を見せた。


また…景色が変わる。


業火に埋め尽くされる村。

悲鳴があちこちで飛び交う。

ギュンターがそれに涙し、深い憎しみの目をした。


次に映ったのは、幼いカムイ様。

彼が教育係になった時だろう。

憎しみを隠してカムイ様に笑いかけるギュンターに、私は全てを悟る。



…彼は、復讐するつもりだったのだ。

自らの家族を。故郷を壊した王に…王族に。

だからあの時、王族を倒そうと動いていた私の諜報活動を黙って見ていた。

仲間のようなものだったから。


…厳しくて、優しくて。


まるで父のようだったギュンターは、それを果たせぬまま消えた。


ーーー


「うっ…ひっぐ……姉さん…」


泣きながらなにか文章を書くフェリシア。

ここはマラカス宮殿のとある一室。

誰もいない空間で妹は瞳に大粒の雫を貯め続ける。


その手元には、あの日…私が受け取ったあの手紙。

決して手紙には涙を落とさぬよう、顔を背けながらフェリシアは嗚咽をこらえていた。

床には何度も書き直して捨てられた紙がある。

彼女も…たくさん悩んでいたのだろう。


泣いて…泣いて。


裏切ったのは、やはり許せないけれど…。

だって、そうしなければ今…隣にいたかもしれないのだから。

…それでも、なにも考えていないわけではなかったのだと、知った。


ーーー


カムイ様とジョーカーが同時に映し出される。

そこは…白夜平原だった。


「辛く…ないんですか」


静かな涙を流して、カムイ様はジョーカーに問う。

彼は暗夜の去って行った方を見て…答える。


「私は主君を、あいつは国をとった。それだけのことなのです」


冷静に返すジョーカー。

白夜についた決意と、後悔。

カムイ様はそれを語った。

そして、またみんなで幸せに生きたいと。

それは叶わなかったが、その思いはずっと胸にあったことだろう。


「ねぇ、ジョーカーさん」


カムイ様はジョーカーの前に立って、言った。


「…フローラさんのこと……」


ーーー


「……！！！！！」


そのあと続いた言葉に、私は膝から崩れ落ちた。

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