孤独の氷刃２

story80. ページ33

「エリーゼ、フローラ。戻ったか」

「遅くなり申し訳ありませんマークス様」

「いや、問題はない。こちらも片付いた」


マークス様の視線の先を追う。

そこには、屍の山。

白き砦の前にたくさんの赤が散らばる。

そしてそれを制するのは…黒。


「…あ…」


白く美しい髪を紅で染めたカムイ様の隣に、同じく血を流して息絶えた桃髪のサクラ王女。

その反対側の隣に…サクラ王女と同じ桃髪で、カムイ様と同じ長い髪の…妹が、いた。


「…フェリシア…あなたも…」


この目で最後を見届けられなかった妹。

彼女は瞳の下に染みを残して事切れていた。

まだ目尻に残るその原因を拭い、自分の手をぎゅっと握る。

これで、北の城塞にいた大好きなあの人たちは……



みんないなくなった。



ーーー


「玉座を死守しなさい！！！何としても守りきるのですっ！！！！」


荒れている王都を突き抜けて、王城へと足を踏み入れた私たちは…ついに王の間にたどり着く。

そこには先ほどの守備の手薄さが嘘のように、たくさんの白夜兵がいた。

それを率いるのは、亡き女王のお抱え軍師であったユキムラ。


絡繰を駆使した攻撃を避けながら、マークス様は低く告げる。


「降伏しろ…白夜の軍師。もう王族は息絶えた。反抗する意味がどこにある」

「卑劣な暗夜の王子が何をっ…！白夜は負けなどしません…あの方々がなくなったりなどしません！」

「頭の固い軍師だね」


レオン様が床から植物を突き出して、遠距離から攻撃してくる絡繰を壊す。

それに続いてその臣下たちが残骸を燃やし、粉々に砕いていった。


「お兄様っ…暗器の攻撃が止まないわ」

「忍びたちか…わかった、ボウナイトを準備しろ」

「はい…ルーナ！」


カミラ様は自身の臣下の率いる隊を呼び寄せ、あちこちを飛び回る忍びたちを弓で射抜かせる。

暗器使いは早々に倒すのが良い。

しかし私の武器も…


「覚悟ぉっ！！」

「…甘く見ないでください！」

「うぐっ！」


…暗器だ。

速さに秀でる剣士たちが暗夜軍を縫うように走り抜けて、後方の私たちに迫る。

何人か他の暗器使いたちが破れたようだが、私は負けるわけにはいかない。


「きゃっ…！フローラっ…手を貸して！」

「！…すぐに参ります！」


エリーゼ様に攻撃を仕掛ける弓兵の足場を悪くし、転ばせた。

フェリシアの時と同じように、魔法で貫く。


それから一刻。

暗夜の士気に押され、ついに白夜王城は落ちた。

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