孤独の氷刃２

story74. ページ27

暗い夜空に、私の操る白い雪たちが映える。


「うあっ…！？姉さんっ…やめてください！」

「あなたはもう妹じゃないわ。裏切り者は…部族長の名において排除するのみよ」

「さっきから部族長って…それは父さんのはず！」

「…本当に馬鹿ね、フェリシア」


腰から二本の暗器を取り出して、フェリシアに飛びかかった。

彼女も、一本の暗器で私の攻撃を受け続けた。

刃が交わる中、会話は続く。


「あの時…部族に父さんがいなかったこと…おかしいとは思わなかったの？」

「…っ！？…じゃ、じゃあ父さんは…」


この子にしては珍しく察しがいい。

いつもは鈍感なのに、こんなところでその力が発揮されるなんて…皮肉だ。


私は距離をとって、まっすぐに暗器を構えた。


「そうよ…父さんはガロン王に殺された…！！！」

「…っ！！！！」


泣きそうな表情など構わず、フェリシアの心臓めがけて、暗器を投げつける。

迷いは…なかった。

フェリシアも受け止める気力などないのか、ただぼうっとして迫る刃を見つめる。


「…フェリシアさん！！！」

「…きゃっ！？」


寸前のところで、カムイ様の刀がそれを弾く。

弾かれた暗器は床へと転がった。


「…カムイ様」

「フローラさん…あなたは…っ！？」

「逃がさないよ、お姉ちゃん」


目の前の二人へ、ファイアの連弾が叩き込まれる。

しかし我を取り戻したフェリシアがカムイ様の腕を引き、見事にかわしてみせた。

魔殺し…彼女に魔法はほぼ効かない。


「手伝うよ、フローラ」

「エリーゼ様。カミラ様はいかがされました？」

「ヒノカ王女と戦ってるよ。…邪魔はしない方がいいかも」


ちらりとエリーゼ様が視線をやった先に、斧を振り上げて飛び回るカミラ様の姿があった。

その側には、天馬に乗ったヒノカ王女。

薙刀は細い…斧の威力でそれを粉砕するのは容易。

武器の効果も加算されてか、カミラ様が有利だと見て取れた。


「…では、こちらも」

「お二人とも…私は、戦いたくないのです」

「無駄ですよカムイ王女。私は部族を守るために…どんな犠牲も厭わない」

「あたしだって…守りたいものがあるもん」

「……」


この沈黙は、もはや改心の意味を持たない。

ただ、無駄な時。


「はあっ！」


投げた暗器が足に刺さる。

「うぐっ…」

「カムイ様ぁ…！！」

「平気です…フェリシアさん。はやく武器を！」


さようなら…大切だった人。

私はもう…止まれない。

その赤の瞳を閉ざすまで。

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