孤独の氷刃２

story68. ページ21

薄汚れた天井が視界に入ってくる。

暗夜のものや、部族のものとは全く違う造り。

やはり異国では文化も違う。



平和を愛する白夜。

戦乱を好む暗夜。



昔から、そのように聞いていた。

正義が白で、悪が黒なのだと。

しかし…本当にそうなのだろうか。


私たちの生活を壊した白夜を、

何百、何千もの兵を殺した白夜を、

正義だと…言っていいのだろうか。


「…そんなこと…ないわ」


人を殺すのに正義などあるものか。

人の生活を奪うのに正義などあるものか。

だから私は正義などではない。


カムイ様だって正義なんかじゃない。


もしそうだというのなら…私が壊してみせる。

白夜の行為は許さない。

もうすぐ沈むであろう光のように、私が白夜兵の命を沈めてみせる。

もう失うわけにはいかない。

カミラ様を、エリーゼ様を、死なせはしない。

…だから…私は闘わないと…。


そう頭で言い聞かせたのを最後に、私のまぶたがゆっくりと降りてきた。


ーーー


「…ん……」


目を開けると、もう日の光は無かった。

代わりに美しく艶めく紫が、真上で揺れている。


「…えっ…！？…っ…」


驚いて起き上がった瞬間に、強く頭をうった。

目の前で星が回る…そんな感覚がする。


「あらあら…驚いちゃったわ、フローラ」

「カミラ様…ご、ごめんなさい」


どうやら私はカミラ様の鎧に勢いよく当たってしまったらしい。

突起が付いていなかっただけよかった…。


「もう…夜ですか」

「ええ。…あなたったらここで寝ちゃうんだから、毛布を持ってきてたわよ」

「す、すみません…」

「ふふ、謝るのはまた今度よ。…フローラ、あなたも指示をよろしく頼むわね」

「…はい。お任せください」


腰から暗器を引き抜いて構えを取り、私は了解の意を示した。





「全軍、テンジン砦へ行軍開始！！」


カミラ様の声に続いて、兵士たちの雄叫びが聞こえてきた。

戦が始まるのだと、実感できる。

そのまま、山を下って進軍をしていく予定だ。

この村は山沿いにあるため、白夜兵にも見つかりにくかった。

連絡手段も絶ったそうなので、まさか領内に大量の暗夜兵がいるなど、考えていないだろう。


少数の兵は先に送ってある。

その兵たちの増援としてなだれ込めば、主力部隊のいない白夜などすぐに落とせる。


ーーー


たどり着いた白夜の前衛基地。


「突撃！！」


容赦のない暗夜王女の指示が、どよめく砦に高々と響き渡った。

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