孤独の氷刃２

story63. ページ16

「…さて。フローラさん、理由を聞かせてください。あなたの意思ではないのでしょう？」


立ち上がった私に向かい合うようにして、カムイ様が問いかける。

私を落ち着かせるためなのか、十分に距離をとって話していた。


…この問いかけは、難しいものだ。

白夜が憎い。幸せを崩した戦争が憎い。
ガロン王が憎い。

それは私の感情。

…こんな生活にしたのはカムイ様だ。


だけれど、今刃向かったところで勝てる見込みは一切ない。

今度こそ命を奪われるかもしれない。

だから私はこう言う。


「…申し訳ありません、カムイ様。私は…ガロン王に逆らえなかったのです…」

「！…やはりガロン王に…。脅されたのですね？」

「はい。…あなた方を殺さなければ、部族の者の命はないのだ、と」

「なんて卑劣な…」


カムイ様は顔をしかめて、刀を握る手を強くする。


「とにかく、フローラさん。…あなたは悪くありません。ですからこのまま身を隠して……」

「いいえ…！」


カムイ様の言葉を遮って、私は叫ぶ。

皆が驚いて私に視線を集めた。

…これでいい。


「主人を守ることができず、卑劣な王の命を受けた私の責任なのです…」

「そんな…違いますよ。全ては暗夜に刃を向けた私の…」

「それでもです。…償いは、この私が…」

「ま、待ってください姉さん！」


追いかけて来たフェリシアを手で制して、我が家の前に立つ。

その上階を視線で見上げ、振り返った。

不安げな表情で、カムイ様たちが見つめてくる。

私が今からすることを悟っているかのようだ。


「……」


しばし間を空けてから、私は天に腕を伸ばす。

そして唱えた。


「ファイア…」


途端に、私の体を赤き炎が包んだ。

…熱い。全身が溶けてしまいそうなほど。

体温の低い我が部族にとって、炎に触れるのはとても危険なこと。


「姉さんっ！？な、何してるんですか！！」

「フローラ！！！」

「っ！？どうして！やめてください！！」


フェリシア。ジョーカー。カムイ様。

皆が叫ぶ。

リョウマ王子も、ヒノカ王女も、アクア王女も、タクミ王子も、サクラ王女も、目を見開く。

…憎き白夜の王族の顔。

それをしっかりと目に焼き付ける。


「…さよう…なら。カムイ様…」

「！！！…あ…フローラさ…」

「いやああああ！！！！姉さん！！！」


勢いを増す炎の中で、私の身体は搔き消える。

３人が膝から崩れ落ちて、涙を流す。



…そんな光景を、私はすぐ側で見下ろしていた。

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