孤独の氷刃２

story60.〜another〜 ページ13

＊ジョーカー目線


ーーー


カムイ様のお力で湖を一時的に凍らせて、白夜の半数の兵が攻める。

残りの兵は北の雪道から攻める算段だ。

湖を渡りきって部族の兵と交戦する中で、俺はすぐ隣で戦うカムイ様に言った。


「カムイ様。俺をあいつの元へ行かせてください」

「ジョーカーさん。…大丈夫ですね？」


小太刀で魔導兵をけん制しながら、カムイ様は強い眼差しで尋ねてくる。

無言で深く頷くと、微笑んでくれた。


「わかりました。行ってくださいジョーカーさん！後衛はフェリシアさんに頼みます」

「…ありがとうございます！」


複数の白夜兵を連れて、あいつの元へ向かう。

この部族兵を率いる…フローラの元へ。


カムイ様を裏切ることなんてさせやしない。

あの白夜平原ではレオン王子がそばにいたから、敵対するほかなかった。

きっとそうなのだと、信じ込んでいた。

我ながら情けない話だ。


好きな女は疑いたくない。

そんな気持ちがあったんだろう。

でも…


「私の意思よ。もうあの頃には戻らない」


フローラはそう言い放った。

冷たく突き放されたことに、動揺と苛立ちを覚え、気がついたら叫んでいた。


「お前にそんな真似１０年早え！！」


…本当はそんなことはなかったのに。


フローラはあの城塞で誰よりも優秀で気配りができる見本となれるようなメイド。

俺の方が数年前に仕え出したというのに、あいつの方が優秀だった。

紅茶に関してだけは負けなかったが…。


他は文句の一つもない完璧な奴。


そんなあいつに１０年早いと言うのはおかしかったかもしれない。

だが、言わずにはいられなかった。


あいつを、取り戻したかった。


「ジョーカー。私、ね…ずっとあなたのこと…」


いくつか言葉を交わしたのち、フローラが何かを言いかけた。

しかし、その声は俺に届かない。

荒れ狂った吹雪が、真横から当たってきたからだ。


戦の前に、フローラが起こしたようなあの吹雪。

だが今度はあいつが起こしたわけではないようだ。

突然の吹雪に驚いたようにしていた。


「あなたのこと…信頼していたわ」

「フローラ…っ…」


しばらくしてフローラの持っていた銀の暗器が、足元に刺さった。

反射的に、俺も暗器を構える。


「始めましょう、ジョーカー」


それが全ての答えだと言うように、あいつは無理やり微笑んだ。

…あの時のようにはいかない。

今度こそ、お前を止めてみせる。

story61.→←story60.

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

革ベルト

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す