孤独の氷刃２

story49. ページ1

白夜の王族はもう…この近くに来ているという話だ。

マクベスがそう言っていた。

タクミ王子にかけていた術は、精神操作。

毎晩、自分の軍の居場所をフクロウにつけて飛ばし朝になればそれを忘れてしまう。


…私と同じ、裏切り者。

しかし記憶をなくしている分、私より罪悪感は軽く気付いた時の絶望は強い。


「フローラ。今日ってなにか集まりがあるんじゃなかったの？あなたは？」


メイドの一人が話しかけて来た。

カムイ様たちを上手く誘い込むために、この場所には私一人にしてもらう。

仕向けたのはもちろん彼だ。

他の使用人たちは宮殿の内部で戦闘の準備を。


「いえ。私はここを任されているの、大丈夫よ」

「…そう。じゃあ行ってくるわ。気をつけてね」

「ええ…」


彼女の後姿を見送って、脱力する。

今回の策を考え直さねば。


まずはここでカムイ様を出迎えて、協力するフリ。

それからマクベスに倒……されたフリをして、そのまま氷の部族へ誘い込む。


部族へは、もう文を送っておいた。

…父のことも伝えた。

部族長を失った打撃は強いが、みな誇らしき氷竜の血を引くものたち。

直ちに準備をしているとのこと。

本当に…頼れる者たちだ。


「…静か、ね」


ここには、本当に私だけ。

中に人はいるけれど、音も何も聞こえない。


…孤独、なんだ。


でも、遠くの地には仲間がいる。

どこか不思議なこの感覚。


「今です…！！！」

「……！」

「早速出ましたね暗夜兵。さぁ皆さ……あれ？」


いきなり角の通路から飛び出て来た白夜兵らしき者に私は身をすくめた。

すぐに暗器を持って威嚇するが、すぐに降ろす。

あの人であったから。

相手も私の顔をみて、動揺した表情だ。


「お久しぶりですね……カムイ様」

「フローラさんっ…！？何故ここに！」

「ずいぶんと前に異動の命令が下ったのです」


そう告げると、カムイ様はあの刀を下ろした。


一瞬、白夜兵に見間違えてしまったのはカムイ様のお召し物が変わっていたから。

暗夜の黒、銀、青が特徴のあの鎧ではなく、一面が白く光り輝く鎧に。


白夜に染まってしまったのだなと、目を細める。


「そうなのですか…。あ、フェリシアさんも似たようなことを言ってましたね」

「姉さん…」


フェリシアが、カムイ様の後ろから頭だけを覗かせて私を見ていた。


「フェリシア。隠れてないで出て来なさい」


強く言うと、彼女は観念したかのようにゆっくりとカムイ様の横へと並んだ。

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