. ページ3
.
.
.
子どもの悲鳴が聞こえるのに、もう体が動かない。
手が震えて、呼吸が段々と浅くなる。
……寒い。
滲む視界で思うことは、私の人生ここで終わりかってことと、あの漫画完結まで読みたかったなって後悔と、これでやっと会えるかなって、僅かな期待。
あぁでも、そうだな。
子どもだけは、助けなきゃ。
私を呼んでる。怯えてる。
「……っ、げほっ、ぅ、」
声も出ないとか、いよいよ笑えないな。
血の味がする。
痛い。苦しい。寒い。……怖い。
______誰か、。
「、……五条、」
ぽつり、と口から出た名前。
ああ最悪だ。最低だ。
ごめん、。
頼りたくないのに。
そんな資格、ないのに。
どうにも、縋りたくなって。
刹那、後ろから聴こえた柔らかな声。
「なーに、A。…呼んだ?」
「……っ、ごじょ、!」
「うん、最強の五条悟だよー」
上機嫌に現れた、男。五条悟。
____Aボロボロじゃん、ウケるね。
ウケる、なんて言いながら。
怒りの籠もったような、ひどく哀しんでいるような眼をして。
「男の子、…っ、が、」
「……ん、りょーかい」
頼りなく指を指した方をちらりと見て、私の頭を優しく撫でると、彼が目の前から消えた。
刹那、呪霊が姿を消した。
……いや、消された。
本当に一瞬の出来事。
(私が手こずった相手を、一瞬で、。)
"最強"をまざまざと見せつけられた。
いつからだろう、彼の背中をこんなにも遠く感じるようになったのは。
トン、と倒れている私の横に降り立った彼の手には、雑に抱えられた男の子。
気を失ってはいるが、目立った外傷もなく、無事のようだ。
「よかっ、た」
気が抜けた。
そう、ふっと気が抜けて。
「A?!」
珍しく驚いた表情を見せる五条を最後に、私の瞼はそっと閉じた。
.
194人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
日向(プロフ) - ひさん» わああもったいないお言葉ばかり…!!とても嬉しいです!そんな風に言っていただけると、描いてよかったなと思えます。素敵なコメント、大切にします!ありがとうございます! (2022年1月26日 22時) (レス) id: 67ceeec321 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 甘雫さん» 思いが一致したという言葉、とても嬉しいです!素晴らしいなんて言っていただけて、本当に光栄です。こちらこそ、嬉しすぎるコメントありがとうございます…! (2022年1月26日 22時) (レス) id: 67ceeec321 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - たろ。さん» わああめちゃくちゃ嬉しいです…!読んでいただくだけでなくコメントまで、本当にありがとうございます! (2022年1月26日 22時) (レス) id: 67ceeec321 (このIDを非表示/違反報告)
ひ(プロフ) - 泣きました、、自分的にキャラに合ったセリフで特徴?捉えてて共感してすごいな✨て思ったし読みやすくて話が綺麗だし、とにかくめちゃ良かったです…✨素敵な小説ありがとうございました!完結お疲れ様でした✨ (2022年1月25日 23時) (レス) id: 858c606167 (このIDを非表示/違反報告)
甘雫(プロフ) - 映画は場面の転換が早く、感傷に浸る暇もなく泣くにも泣けませんでした。しかし、作者様の夏油傑に対する思いが私の思いと一致し、今泣けました。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2022年1月23日 18時) (レス) id: fa6ec39255 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:日向 | 作成日時:2022年1月18日 1時