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部活動が豊富なこの学園。その中でバレー部に所属している志麻せんぱいはたまに朝練や土日の試合の話をしてくれる。文化部しか所属してこなかったわたしとしては、新しい世界で、テレビを見ているような非日常的な話だったのを覚えている。
七月目前の部活のスケジュールを思い出す。そういえば先週、講師の先生が急な出張で部活が休みになっていた気がする。それを来週の月曜日に振り替えをしたいと部活動のLINEグループで送られてきたのを思い出した。
「ごめんなさい、来週は臨時で部活が入っていて…。再来週でも大丈夫でしょうか…？」
「うん！再来週ね。すごい楽しみ！」
ニコッと笑顔が眩しい。その姿は先日のスイーツパラダイスに行った時のような柔らかい笑顔で、やっぱり皆が言ってるようなクールな印象とは違って見えた。
もしかしたら勝手なイメージで付けられた理想なのかもしれない。話を聞く限り親しい人物は限られているようでその人達の中でしか素顔をさらして居ないのかも。
決められたイメージを背負うのも、きっと息が詰まりそう…。
そう考えていた時、覗き込むように志麻せんぱいが話題を変えてきた。
「Aちゃんは？」
「えっ？」
「Aちゃんはなんて言おうとしたの？」
「えっと…、その」
言いかけた言葉は喉元で止まった。今こんなことを言えばさっきの約束も打ち砕かれる。志麻せんぱいはせっかく楽しみにしているのに、それを奪うようで気が引けてしまった。
言えない。
でも、今のままもいけない。
「……お礼を言いたくて」
近くなったら目を付けられてしまう。それなら適度な距離を保って自然に溶け込めば、違和感のない日常が始まる。変に噂はたてず、ただの後輩として志麻せんぱいと付き合うのだ。
「手伝ってくれて、ありがとうございました」
「あ……、ううん。このくらい平気」
「では、失礼します……」
職員室の前で志麻せんぱいから手伝って貰ったワークを受け取り、逃げるようにクーラーがいれてある先生たちの部屋に入った。
ピシャリと閉じた扉。
廊下と職員室で区切られた扉一枚。
その程度の距離がきっと正しい距離。
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