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「良ければ俺に掴まって？保健室まで案内するし」
「えっと…、」
断ると迷惑がかかるのか。
それとも甘えると迷惑がかかるのか。
親しい人としか深く関わろうとしなかったわたしにとって、その判断が難しかった。
迷惑じゃ、ない方をえらばなきゃ…。
でも、それって、どっちなんだろう…。
「あ、そうそう。部活で包帯が切れててさ、予備貰いに行こうかな〜って思ってたんだよね」
「……え？」
「それ後回しにしようとしてたから、俺的にちょうど良かったっていうか」
ね？と黒縁メガネの奥の瞳が優しく微笑む。
これ以上優しさを断るのも虚しくなり、一度だけこくりと頷く。
「じゃ、行こっか。ゆっくり行くけど、早かったら言って？」
「はい、…すみません」
しばらくして落ち着いたわたしは人の少ない校舎をさっき出会ったばかりの彼の斜め後ろをついて行くような感じで歩いている。
ネクタイの色、赤だった。
ということは、せんぱいだよね…？
失礼な言い方してなかったかな…。
今日も多分行われるであろう一人反省会の議題がひとつ上がった瞬間だ。こんなダメなところばかりだから…とやっぱり後ろ向きになってしまってどうも前向きに考えられない。
癖なのか、そういう体質なのか。
分からないけれどそういう考え方しか出来ないのだ。
「失礼しまーす」
「あれ？志麻くん？……と、結構派手に転んだね。平気？」
「ぁ、はい、」
入学して保健室に来たのは二回目だ。
一回目は確か学校案内のついでに身体測定をした。まだ友達も少ないクラスの中で、出席番号の近い子とヒソヒソ話してた。
確かその時の内容が、「保健室の先生ってかっこいいよね」と言っていたが、今改めてこう見ると本当に保健室の先生では勿体ないと思ってしまうほどかっこいい。
ちょっとくせっ毛な髪に高校生では感じられない大人っぽい雰囲気がある白衣を着た先生は、確かそらる先生。
「うーん。……俺、今からまふまふの所に渡しに行かないといけない資料があって保健室開けるんだけど」
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