【歌い手】学園メモリアル②【smus】 (ページ6)

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「あ、全然……大丈夫。ちょっとびっくりしただけだよ」

イケメンなが話しかけてくる時、何らかの合図が欲しい。
今から話しますよってワンクッション何か欲しい。
じゃなきゃ心臓が持たないだろうが。

なんてAは無茶な事を思っていた。

「それで、提案って？」
「俺がアンタの腰引き寄せればいいんじゃね？」
「……え」
　──は？──

「だから、腰を」
「あ、ううん。そうじゃなくて」
　──誰も二回目の説明求めてねぇよ。──

このヤンキーは一体何をいいだすんだ。

二人三脚はただでさえ密着する競技。身長差のある男女なら肩を組むより腰に手を回して走った方が安定もするし、早くなる可能性だってあるだろう。

──え、でも、それって、ちょっとえっちくない？？え、やばない？？──

もうスチルがどうこう言ってる場合ではない。返事を返すのもままならない間にうらたぬきとAの順番がやってくる。

うらたぬきは動揺することも無くハチマキで足を結び、スタート位置に立ってAの腰を引き寄せた。

「！」
　──まままま、ま、まじで言ってる！！！？──

これが現実ではないことは分かってはいるんだが、腰を引き寄せられる(しかもかなりのイケメンに)シチュエーションなんてそうそうない。

しかも、強引になんて、もっと無い。

「走ったら終わんだろ」
「え、で、でも」
　──走る前に私の心臓が止まるんだが？？？──

「ちっ、うっせーな」

「行くぞ」とうらたぬきの掛け声と共にパンっと空砲の銃が鳴り響いた。

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