【ツイステ】Guilty7【短編集】 (ページ48)

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◆You ページ48

【優しい思い出】
［監督生 × 色欲姫］

「あなた、異世界から来たのでしょう？」

モストロ･ラウンジで一時的にお手伝いに来たのは、オンボロ寮に通う監督生さんだった。なんでもペットの彼がツナ缶を食べ過ぎたせいで生活が苦しくなったとか。そこで手を差し伸べたのが我が寮長のアズールだった。

客足も引いた店内でずっと気になっていた質問を問いかける。

「そうですね。帰り方はまだ分かってないんですけど…」
「今はお友達もいるようだから寂しくはなさそうだけれど、早く見つかるといいわね」

帰り方が分からないだなんて、まるでオズの魔法使い。行く先々で仲間を集めては願いを叶えてくれる魔女に言うのでしょう？『帰り道を教えて』と。

「ありがとうございます」
「ふふ。そういえば、あなたのお母様はどんな方？きっと心配してるわ」
「母は────…、」

監督生さんの話す幼少期から今までのこと。思春期で別れてしまった家族の思い出話は優しく、話を聞く限りではごく普通の幸せな家族だ。

「お母様に、会いたい？」
「……それはもう。とっても」
「…────『ユウ』」
「え、」

話に出てきたお母様を想像して変化した私を見て監督生さんは酷く驚いた。

「『心配したじゃない。今までどこに行ってたの？』」
「な、んで…」
「『でも、無事で良かった。ユウ…』」
「おかあ、さ……」
「『おかえり』」

ポロポロと涙を流す監督生さんを見てユニーク魔法を解く。一時の日常を取り戻した彼は、涙を拭いたあとに御礼を伝えてきた。

「お礼なんて言われる筋合いないのよ。私には」

だって、あなたに苦しんでもらいたくて魅せたものだから。

慣れてきたと思っていた感覚が巻き戻る。振り出しにまでとはいかないけれど、今まで積み重ねてきた【優しい思い出】は今になって首を締めてくるはずよ。

帰りたい？
会いたい？
話したい……？

でも、まだだめ。帰り道を尋ねていないでしょう？

「またあなたが望むなら魅せてあげるわ」

望めば望むほど首を締められる。
なんて心地よい地獄なんでしょうね？
また、忘れた頃に。

────…
「私はあなたの幸せを願ってるわ」
私なりの【幸せ】の形だけれど、ね？