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「どうした二口?」
 茂庭さんの声は相変わらず柔らかかった。暗い海底に陽の光が射したみたいで、ぎゅっとケータイを握り締めた。
 茂庭さんに一切の事情を話す。電話越しの相槌が優しい。青根と喧嘩したこと、皆の引っ張り方や望みに答えること、茂庭さんみたいな主将(キャプテン)になりたいということ。泣きたいほどの衝動を抑えて話し切る。沈思していた茂庭さんが、やがてゆっくり話し始めた。
「二口は、本当に良い主将(キャプテン)になったな」
 俺が、良い主将(キャプテン)に? 驚いて直ぐに声が出ず、はくはくと口を開閉する。声は出なくとも呼吸音だけは向こうに伝わっていたみたいで、茂庭さんはちょっとだけ笑った。
「俺が主将(キャプテン)になったのは、村間がやめちゃったからなんだよ」
 村間さん。覚えてる。例えるなら烏野の主将(キャプテン)みたいな感じの人で、茂庭さんの一個上の先輩が引退すると同時に部活をやめた。村間さんは責任感があって技術も高かったのに飽きた、と言って退部したと聞いている。
「それで急遽俺が主将(キャプテン)になったんだ。あとで鎌ちと笹やんが村間に聞いたらしいんだけど、憧れてた先輩がやめた途端に部活がどうでも良くなったんだって。だから俺もすっごい必死でさ、退部者が出ないように出ないようにって、前の主将(キャプテン)にならなくちゃってやってたら弱くなっちゃった」
 茂庭さんが弱いわけがない。そう言いたかった。
「俺がここまで頑張れたのは、単純にバレー部のメンバーが好きだったからだよ」
 メンバーが、好きだった。刺さった。
「俺が前主将(キャプテン)の真似ばかりしてて進捗がないからって、鎌ちと笹やんが喝入れてくれたんだ。お前はお前だって」
 ただ静かに呼吸だけを繰り返す。
「だから二口も、俺になろうと思わないで。好戦的なくらいのほうが良いよ」
 画面を越えて、茂庭さんの笑顔が見えた気がした。

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永遠になりたい來夢(プロフ) - 覚えてるかな?仲良くしてもらった來夢です!占ツク、卒業しちゃうかもなんだね(´・ω・`)受験、頑張ってね!他サイトに移ったとしても時々私にコメントとかしてくれると嬉しいな(*´ω`*)宮瀬ちゃんの作品、大好きだからね!(グダグダごめんね) (2018年1月19日 15時) (レス) id: 4f87253095 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:宮瀬幸雲@Ms.腹筋崩し | 作成日時:2018年1月3日 14時

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