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激昂 ページ6

明るく放たれた言葉。木下さんの躯が怯えでガクガクと震える。

「だからって一人傷付けたんですかッ!?」

律花が激昂して叫ぶ。怒鳴り付けるような律花の声を優衣香さんは笑顔でスルーして言った。

「傷付けたんじゃないよ、殺すつもりだったのよ〜」

殺す、という直接的な言葉に、木下さんが声にならない悲鳴をあげる。



「………………に」



私のものって思えないくらいの、低く、暗い声。
何? と相変わらずの語調で優衣香さんが聞き返す。



「何の為に」



一層低く、暗く問う。
怒りを、呆れを、言えなかった分も封じ込めて。
優衣香さんの次の言葉を待つ。

「何の為に? って……。飛雄の為じゃん!」

きゃぴきゃぴしたその声。可愛らしく明るいその笑顔。ふわふわ揺れるその髪。

全てが憎くて堪らない。

「木下さんを殺したら、飛雄はどうなるんですか」

クエスチョンマークを付けずにまた問い掛ける。優衣香さんの笑顔は変わらない。



「邪魔者は居ない方が良いでしょう? きゃっははははっ!」




邪魔者?
何処が?
誰が?

木下さんが?




「行っちゃった……」

怒りのあまりフェードアウトした私を我に帰したのは木下さんの小さな声だった。
バッと顔をあげると、小さくなった優衣香さんの後ろ姿が見える。

「ごめんなさい。傷をつけちゃって……」

間に合わなかったのが申し訳無くて、私は木下さんに謝った。
もう少し早かったら、木下さんはこんなに怖い思いをせずに済んだのに。

「うぅん、大丈夫だよ」

俺なんて立ち向かいすらもできなかったよ、とへらりと笑う木下さんの頬に絆創膏が貼り付けられていた。どうやら律花が貼ったらしい。

「手当てまでしてくれたしね」

木下さんはまだ少し震えの残っている足で何とか立ち上がった。

「飛雄……って、影山の事だよね?」

木下さんの問いに律花がはい、と答える。

「俺が影山の邪魔になるって本当?」
「いえ、違います」

か細い、不安げな木下さんの言葉に律花が間髪入れず応じる。

「優衣香さんの思い込みです。誰も飛雄の邪魔をしていません。だって、烏野高校排球部ですよ? 飛雄が邪魔だと思う訳無いじゃないですか。大切な仲間(チームメイト)ですからね」

私が言葉を継ぐと、木下さんが嬉しそうに微笑んだ。木下さんって、笑顔が凄く可愛い。だがそんな可愛い笑みも直ぐに消えてしまった。

「他の人も邪魔だと思ってるのかなぁ……?」

仲間→←木下



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作者名:桃@宮瀬幸雲 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2017年2月23日 11時

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