推しが消される【ハイキュー】 (ページ5)

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木下ページ5

『木下君へ。
突然ごめんね。
あたし、三年三組の平山優衣香って言います。
伝えたい事があるので、昼休みに体育館裏にきてくれませんか？
勿論、あたしに構ってる暇が無いなら無視してくれて良いよ。
平山優衣香より』

読み終わったあと、私と律花は視線を合わせた。
優衣香さんの最初のターゲットは、木下さんのようだ。

昼休み、体育館裏。二つのワードを覚え、私達は二年一組の教室へと向かった。

＊**＊**＊**＊**＊**＊**＊

「本物の田中さんだったね……」

私と律花は感動を爆発させないようできるだけ静かに体育館裏へ足を進めていた。本物の田中さんに私達はとってもテンションがあがっているんだけど、興奮を露にしたら変人扱いされて優衣香さん捜査に支障をきたすかもしれないので、昂りを全力で押さえ付ける。

「……の、………………」
「……………、……で……」

話し声が聞こえてきた。この声……間違いない。優衣香さんと木下さんだ。

体育館裏からはドサッという叩き付けるような音と、抵抗するような声。一刻も早く行かないと……！

「行くよ、A」

私より足の速い律花に腕を掴まれ、走り出した。
抵抗の声がだんだん大きく聞こえてくる。カリカリカリ、という音は恐らくカッターの刃を出す音だろう。優衣香さんは自分を傷付ける事はしないだろうから、カッターキャーの可能性はゼロに等しい。直接木下さんを斬るつもりなのだろう。

何度かつんのめりながら体育館裏へ駆け込む。

「どうしましたか！？」

律花が態とらしく大きな声で言う。壁に押し付けられ、真っ青になった頬に緋の筋が走っている木下さんと、木下さんの胸ぐらを左手で、カッターを右手で握り締めている優衣香さんが其処に居た。

「あら、Aちゃんに律花ちゃん」

優衣香さんは悪びれもせずに木下さんを解放し、私達に笑顔を向けた。木下さんが壁に凭れたまま崩れ落ちる。

「ッ、木下さん」

私は木下さんの傍に滑り込むように駆けつけ、蒼白の顔を見た。一ヶ所緋が走っているだけでそれ以外は……呼び出されて殺されかけた心の傷だろう。木下さんははくはくと口を開いたり閉じたりしながら自らの袖をぎゅっと握った。

「優衣香さん、何するつもりでしたか」

同い年だが他校だから、という理由で律花が敬語を使って優衣香さんに問うた。

「いやぁ？先ず最初に消しとこうと思って！木下なら成功しても失敗しても気付かれないだろうしね～！」