憤怒 ページ3
「A、それ」
律花に話し掛けられ、漸く我に返った。
「本当にトリップ出来るのかな」
律花は私の手から箱を取り、開封する。
卵形の機械が二つと取り扱い説明書、そして優衣香さんのまるっこい文字が書かれたメモ用紙。
律花がメモ用紙を開いた。
「『Aちゃんへ。あたし、塾が終わったら直ぐにトリップして飛雄の邪魔をする奴を消しに行くの♪ 菅原、消えちゃうかもねー(笑) 良かったら使ってね!』……意味判んない」
全て読み上げた律花がメモ用紙を机に叩き付ける。
「原作を破壊するって事?」
全てを理解した私は、結論を述べた。
その声は自分でも吃驚するほど低く、暗い声であった。
「許せない。ハイキューを、壊す、なんて……ッ!」
怒りで、呆れで、何も言い返せなかった後悔で、ぼろぼろと涙が落ちる。
「ッ、やだ」
壊したくない。壊されたくない。
律花は私の手をとって塾の外まで出てくれた。自分の涙を強引に止める。
「A、どうするの?」
律花の問い。座っていた机から此処までの間に、私の中で結論は既に出ていた。
「私もトリップして、原作の破壊を阻止する」
述べると、律花が問い掛けた。
「私も一緒に行っても良い?」
「良いの?」
聞き返すと、律花は力強く頷いた。
「原作を護りたいし、A一人じゃやっぱり無理がある。協力したいの」
優しく、でも頼もしい言葉にまた涙が溢れそうになる。
「今すぐ行こう。もしかしたら原作の破壊は始まっているかもしれない」
そうね、と律花が頷く。私達は説明書を読み、
「行くよ」
ハイキューの世界に、トリップした。
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