今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:454 hit
小｜中｜大
赤毛は元来、獣のような性欲と道徳の頽廃の印と考えられていた。
しかし、この地域にはもう一つ、赤毛を象徴とする存在がいた。
悪魔に魂を売った、人々に災いをもたらす存在
___"魔女"である。
女は投げられる石を避ける術を失った。殴られ、蹴られた。誰かが、赤髪は高く売れると口にした。制止の声は当然のように届かない。
女は泣くことも出来なかった。正確には女は泣くことすら出来ないのだ。
いつしか、女の瞳から光が消えた。
6 ページ6
＊
身一つで、女は城下へと続く関門にまで辿り着いた。瞬間、心身共に疲弊しきった身体はオアシスを目の前にして崩れ落ちる。
美しかった赤髪は、いつの間にか白髪混じりになってしまった。"彼"が綺麗と言ってくれた、この髪は既に輝きを無くして、女の心さえ閉ざした。
ここ数日、何も口にしていない。出来ることは、偽善の心で、ロザリオを握り締めて神に縋り眠れない夜を過ごすことだけである。
__狼の遠吠え、動物達の声が行き交う森の中、女は一人あの日聞いた住民の悲鳴に魘された。
当然のように神からのお告げはない。
無理矢理立とうとしても、手足には力が入らず虫の息でただ地面を這った。目の前も霞んでよく見えない中、誰かの足音が微かに聞こえた。
「………ひと、か？」
白く霞んだ視界に、人の顔がぼんやりと映った。認識も出来ず、ただ声のした方へ顔を向ける。
一瞬でぐにゃりと、その顔が歪んだ。
「！…ひっ、！…た、大変だ！魔女だ！！！魔女がいるぞ！！！！」
『……っ、う"……』
咄嗟に否定しようと声を出そうと、息を吸う。しかし、出てきたのは掠れたか細い声だけである。飲まず食わずの女に、話す体力など残されていなかった。
ドタドタと足音がして、荒らげた声が飛んでくる。
女の顔に、小石が投げられた。痛みで蹲り、顔を抑えると髪を乱暴に掴みあげれられ、拳が飛んでくる。
「魔女め！！人里に現れやがって！天罰を食らったか！」
「油断するな！手負いの魔女を逃がせば悪魔になって帰ってくるぞ！」
しかし、この地域にはもう一つ、赤毛を象徴とする存在がいた。
悪魔に魂を売った、人々に災いをもたらす存在
___"魔女"である。
女は投げられる石を避ける術を失った。殴られ、蹴られた。誰かが、赤髪は高く売れると口にした。制止の声は当然のように届かない。
女は泣くことも出来なかった。正確には女は泣くことすら出来ないのだ。
いつしか、女の瞳から光が消えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：盧 | 作成日時：2022年11月16日 20時
