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十字架__贖罪の犠牲、罪や死に対する勝利…その町には到底似つかわしくないマークである。
「それと同じように、樹海を進んだ先…国境付近のゼガルに十字架が？」
疑問符を浮かべて、顔を上げると恰幅のいい男が一人。カッチリとした七三分けの髪と黒縁の眼鏡から覗く緋色の瞳、季節関係なく身につけている赤いマフラー。それらは10年来の友人である男の象徴だった。
目の下に薄く残った隈は、彼の苦労性を体現している。その苦労の種に自分が含まれているかと思うと少し…愉快だ。
「そうや。二週間前にゼガルの森に向かっとった猟師から警備隊の方に連絡があったようやで」
そう言って、恰幅のいい男はその太い指でコツコツと報告書の一部を指した。
「あの地域は大きな水源も近くにない。あるとしたらその小さな森だけだ。特徴的なのは町民がみな熱心な信仰者だということぐらいだが…そういえばゼガル出身で帝国の枢機卿団員が一人いたよな。そいつはどうした」
「その団員、一ヶ月の休暇を取ってゼガルに帰省しとる。年に一度の祭りがあるらしいんやけど、それに参加するために帰省すると周りに言うとったらしい。仕事熱心で優秀な人材、素行の乱れもなく、ゼガルに妻と子供三人残してこっちに奉公しに来とる。」
そいつだけじゃない、と重ねられるゼガル出身の兵士の休暇要望書。ざっと見で十数人はいる。
目を通してみると、全員に目立った素行の悪さもなく、みな優秀な人材ということが分かった。向上心もあり、忠誠心も忘れず、兵士のお手本のような人間達。
「ゼガル出身の者が全員帰省しているのか。となると、出稼ぎに来ていた人間も帰省しているはず…必ず参加しなければならない重要な祭り…ふむ」
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東南の樹海で見回りを行っている視察団から、連絡が入ったのは出発してから一週間後の事だった。
37年前まではその樹海の近くに町があり、大層栄え、地域独特の催しが開かれていたと聞いている。
水源にも恵まれ、作物を育てる場所としては最適とされていた。
しかし、異常気象による大雨により洪水で引き起こされ、一晩で町全体が飲み込まれた。出稼ぎに城下へ来ていた者たち以外の住民の殆どが、その災害で命を落としたとされる。
その湖は奇しくも、十字架の形をしているそうだ。
「それと同じように、樹海を進んだ先…国境付近のゼガルに十字架が？」
疑問符を浮かべて、顔を上げると恰幅のいい男が一人。カッチリとした七三分けの髪と黒縁の眼鏡から覗く緋色の瞳、季節関係なく身につけている赤いマフラー。それらは10年来の友人である男の象徴だった。
「そうや。二週間前にゼガルの森に向かっとった猟師から警備隊の方に連絡があったようやで」
そう言って、恰幅のいい男はその太い指でコツコツと報告書の一部を指した。
「あの地域は大きな水源も近くにない。あるとしたらその小さな森だけだ。特徴的なのは町民がみな熱心な信仰者だということぐらいだが…そういえばゼガル出身で帝国の枢機卿団員が一人いたよな。そいつはどうした」
「その団員、一ヶ月の休暇を取ってゼガルに帰省しとる。年に一度の祭りがあるらしいんやけど、それに参加するために帰省すると周りに言うとったらしい。仕事熱心で優秀な人材、素行の乱れもなく、ゼガルに妻と子供三人残してこっちに奉公しに来とる。」
そいつだけじゃない、と重ねられるゼガル出身の兵士の休暇要望書。ざっと見で十数人はいる。
目を通してみると、全員に目立った素行の悪さもなく、みな優秀な人材ということが分かった。向上心もあり、忠誠心も忘れず、兵士のお手本のような人間達。
「ゼガル出身の者が全員帰省しているのか。となると、出稼ぎに来ていた人間も帰省しているはず…必ず参加しなければならない重要な祭り…ふむ」
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作者名：盧 | 作成日時：2022年11月16日 20時
