天使が羽根を休める場所。【ars】

Café Jun ページ20

私は、松本さんが経営する喫茶店へ行った。


小さな店だけれど、オシャレな字で"Café Jun"と書かれた看板が置いてある。


斜体の文字を見てしまうと、どうしても何かの学名なのかと思ってしまうのが職業病である。


いけない、こんなところで突っ立ってたら怪しまれる。


ドアに手をかけ、中に入る。


チリンチリン


潤「いらっしゃい」


松本さんはエプロン姿でカウンターに立っていた。


店の中はほぼ満員で、若い女性ばかりだ。


私はカウンター席に座る。


潤「来てくれたんだ」


『オシャレなお店ですね(笑)』


店の中は落ち着いていて、それでいて小物や照明にこだわりが見られる。


BGMは静かなジャズが流れている。


潤「ありがとう。ご注文は？」


『コーヒーで』


潤「了解」


松本さんは手際よくコーヒーをいれ、私の前に置く。


『いただきます』


一口飲めば、コーヒーの香りが広がる。


『美味しい。さすが松本さんですね(笑)』


潤「これでも最初はなかなかうまくできなくてね」


『この店は自分で？』


潤「いや、店自体は譲り受けたものなんだよね。もともと俺の師匠がやってて、もう歳だからって譲ってもらった」


『それでも1人でやっているのはすごいですね』


潤「忙しいときは大変だけど、慣れたかな」


『バイトは雇わないんですか？』


潤「別にそこまで手が足りないわけじゃないからいらないかな」


松本さんは少し間をあけてから、でも、と言う。


潤「Aちゃんなら雇ってもいいよ(笑)」

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