ゆらゆらポニーテール ページ13
窓側の一番奥の席はいわゆる主人公席と呼ばれているらしい。入学当初は落書きしててもバレないラッキー程度に思っていたが夏が近付くと座学が多い日は地獄だ。
座っているだけでじんわりと汗が滲む。
髪を後ろで束ねて結び、ぱたぱたとノートで扇ぐ。
ジュース奢るからついてこいとみかちゃんに誘われ、一階目指して階段を降りる。
自販機前には誰もおらず、二三年生に会わずに買えるのはラッキーだ。先輩って存在はやはり近寄り難い。
「ちゅーす。一年？」
「ぎゃ」
「お、乙夜先輩…！」
この人はいつも私の行く先々に現れる。
挨拶をしようとみかちゃんの陰から顔を出せば、私の存在に気付かなかったのか目が合った瞬間、先輩が顔を覆ってしゃがみこむ。
「え、待っ、Aちゃんのポニーテール超アガる」
やばーいとか何とか喚きながら、未だに縮こまっている先輩。
恥ずかしくてめっちゃ早口で｢ｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽ｣って言った。
先輩は私より20cmぐらい背が高い。
だから頭のてっぺんを見たのは初めてだ。
「可愛すぎるでしょ、マジ無理。」
限界オタクみたいなこと言いながらポケットから財布を取りだし、半ばヤケクソ動作で1000円札を入れる姿は何ともシュールだ。
先に並んでいたのは私たちなのに、と思っていた矢先、「好きなの押しな」と先輩が言う。
奢られるような立場ではないため遠慮していると、
「Aちゃんのオススメなに？」
と訊ねられ、素直にりんごジュースと答えれば、2回そのボタンを押す。詰まってしまわないだろうか。
「お揃い。これAちゃんの分。君は？」
器用に取り出し、差し出されたりんごジュースを両手で受け取って二度目のお礼を告げる。
それと同時に、なんて高度なテクニックだ、と感心した。
こういうことをサラッとしちゃうからモテるんだろうな。
みかちゃんは先輩のファンらしく、嬉しそうな顔でお礼を言っている姿は健気で、ほんの少しだけ胸の奥がざわざわした。どっちに対してだろ。
「一年あと1時間だっけ？」
「はい！古文で最後です！」
みかちゃんと先輩が話している傍で椅子に腰かけ、ぼーっと窓の外を見ていた。二人の会話を背景に、明日の休みはどうしようか、と考える。
不意に、ぽんぽん、と肩を叩かれ、そちらを向けば頬にぷに、と何かが突く。先輩の人差し指。
「Aちゃんも、またね」
「…おつかれ、さまです。」
話はもう終わっていたらしい。
満足そうに去る先輩の後ろ姿を見送るのは何度目だろう。
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ちえ - 乙夜の誕生日気がついてたら終わってた。 (12月9日 19時) (
レス) id: ce10ab680a (このIDを非表示/違反報告)
るあちぇ - 先輩後輩系だいすきなんだが！？しかも後輩が女子側のやつがだいすきです、！この作品最高です！！更新頑張ってくださいねー！！！ (9月6日 20時) (レス) id: b2fdbadc01 (このIDを非表示/違反報告)
そらちゃま - えーんTTめっちゃすてきです・・・！更新楽しみにしてます！ (5月19日 15時) (レス) @page19 id: 46f4834660 (このIDを非表示/違反報告)
融点(プロフ) - 死ぬほど好きです、めちゃくちゃ好きです……。更新応援しています……！！ (2023年4月6日 18時) (レス) @page18 id: 6f6f2e1e89 (このIDを非表示/違反報告)
もか@無気力(プロフ) - BAB子さん» いえいえ､自分もついうっかり外し忘れちゃう事とかあるので!皆で教えあっていきましょう💪 (2023年3月27日 20時) (レス) id: 611339ddb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：BAB子 | 作成日時：2023年3月23日 22時
