逮捕 ページ40
『彼女はもう、僕の部下ではありません』
目を覚ますと、そこは見覚えのない天井が広がっていた
「目が覚めたようだね」
「！……貴女は、探偵社の…」
Aの声を掛けたのは、与謝野だった
体を起こしたAに与謝野は水を渡すと、医務室を出た
「………」
「目が覚めたよ」
与謝野は医務室を出て、医務室前に居る太宰と敦にそう言った
「！」
「……」
敦は安堵の表情を浮かべたが、太宰の顔は険しかった
ガチャ
「Aちゃん…良かった」
寝台で体を起こしているAに敦はそう言った
「……相変わらずのお人好しだな」
Aは敦の方を見ずにそう返した
「？」
「孤児院に居た時から、自分の心配だけをして居ればいいものを、貴方は他人の心配をする
本当に貴方は、私の恩人によく似ている」
「恩人…？」
そう言ったAの顔はどこか哀し気だった
「そう、恩人……
本だけが友人みたいな寂しい人で、同時に居るべき場所を間違えていた」
Aは淡々と語る
その脳裏には、自分に大切なことを教えてくれた男が浮かぶ
「…敦君、安吾を呼んできてくれるかい？」
太宰は敦にそう言った
「…判りました」
敦はそう言うと、医務室を出て行った
「…何故、坂口さんを？」
「判っているだろう？」
ガチャ
Aと太宰が言葉を交わすと、医務室の扉が開き、安吾と敦が入ってきた
「…怪我は大丈夫そうですね」
「……見ての通り」
安吾の言葉にAはそう言ったが、警戒心を解くことはしない
「貴女に云わなければならないことが」
「…？」
「『死の家の鼠』は、頭目の逮捕により壊滅しました」
「！」
その言葉にAは目を見開いた
「逮捕って……！」
「当然の事です 彼は、数々の罪を犯していますから…」
「………」
「彼は今、『ムルソー』に居ますが…欧州の異能組織の判断によっては、最悪…」
その続きを安吾は言葉を濁した
「……なら…私が戦った意味は…」
Aはそう呟いた
「兎に角、我々と来てもらいますよ…十六夜Aさん」
ジャラッ
「！？」
安吾が言い終わるや否や、安吾の体に鎖が巻き付いた
「今此処で、貴方を殺すことは簡単だ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朱鷺の砂 x他1人 | 作成日時：2019年8月1日 22時
