棄てた名 ページ35
「珍しいこともあるんですね」
敦と芥川が八絃と戦う中、水無月はAにそう言った
「何が？」
「治癒異能と鎖の異能……この二つの併用は、初めて見ました」
「………」
「そんなに、白虎の彼がお気に入りですか？」
「…は？」
水無月の言葉にAはそう言った
「私が気付いていないとでも？」
「どういう意味？」
「貴女は、自分の
昔の貴女からは考えられませんね」
激しい戦闘を繰り広げる横で展開される会話
「……彼処まで似てると、調子狂うんだよ」
「？」
「異能力や権力、そういう力を私利私欲に遣わず、絶対に弱者を見棄てない
そういう人は、化けると制御不能になる」
「それは……貴女の母親の事ですか？」
「さぁ？ 母親の記憶なんてほぼ無いし…
それより、水無月って名前、捨てない？」
「はい？」
唐突のAの言葉に水無月は聞き返した
「裏切ったんだから、そんな名を名乗る意味は無い」
「この状況で、ですか？」
「今、あの男の矛先は私達じゃない……こんな状況、今まであった？」
「ありませんね、当然ながら」
「じゃあ…………」
Aは考える素振りを見せると、立ち上がった
黒い外套を脱ぎ捨て、首のチョーカーを外し投げ捨てる
そして、軽く肩を回した
「………
「！！」
水無月(以後、有栖川)は、目を見開いた
それと同時に、檻にいた安吾も驚きを露にした
有栖川は、Aの母親・有栖川瀬羅から取ったもの
「あ、そうだ」
Aは檻の方に向かい、安吾の前で立ち止まった
「忘れてた」
そう言ってAは、安吾に眼鏡を差し出した
「それは……」
「貴方の眼鏡です
割れないように戦ったこと、誉めて頂きたいくらいですね」
Aはそう言うと、安吾に背を向けた
「Aさん、
「またエグイ策を選ぶ……」
「どうするんですか？」
「勿論、乗った」
二人は笑みを浮かべていた
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作者名：朱鷺の砂 x他1人 | 作成日時：2019年8月1日 22時
