五つ目の鍵 ＜弌＞ ページ31
Aは部屋を出た
古びた洋館の廊下を歩くと、
「「あ…」」
そこで水無月と鉢合わせた
「「………フッ」」
二人はお互い顔を見合わせると、笑みを溢した
「やられ過ぎじゃないですか？」
「そっちもね」
二人はボロボロだった
「毒を盛られたんですか？」
「まぁね……
そっちは、やたら撃たれたみたいだけど」
「今回ばかりは、この体に救われました」
「私も」
二人は歩き乍ら言葉を交わした
檻のある広間に向かう
二人は扉の前で立ち止まった
「……行きますか」
水無月はそう言うと、扉に手を掛け開けようとした
「！」
「？」
「取っ手が冷たい」
「！………なら、上から入ろう」
二人は引き返し、別の道から向かった
「真逆、場所を移動しているとは……」
「恐らく、彼等は未だ……」
「行くしかないですね」
「そうだね」
階段を登り、廊下を歩く
ある扉を開ける
そこは広間を上から一望できるように造られた細い通路だった
床には赤い絨毯が敷き詰められている
シャンデリアを間近で見られるこの通路は、嘗て家主達に使われていたのだろう
「…戦ってますね」
水無月は広間を眺めて言った
敦と芥川が八絃と戦っている
「でも、明らかに動きが鈍い…」
「矢張り、寒さには勝てないか…」
二人は顔を見合わせる
「二人同時に行きますか？」
「行くか」
二人はそう言うと、階下に降りるタイミングを探る
敦と芥川は、強烈な一撃を八絃に喰らわせることが出来ないでいた
寒さに凍える体
朦朧とする意識
「クッ……」
「おいおい…もう終わりか？」
八絃が言った
背後の檻には、太宰や中也等仲間がいる
ｰｰｰｰｰ負ける訳にはいかない！！
敦は飛び出した
一直線に八絃に向かって拳を振るう
「無駄だ」
八絃の前に氷の壁が出来る
ガンッ
芥川の外套と敦の拳は氷の壁に当たった瞬間、外套と拳が凍った
「何！？」
「！？」
「俺の氷は、餓鬼になんざ破壊出来ねぇよ」
『俺の氷は、餓鬼になんざ破壊出来ねぇよ』
「今ですね」
「今だね」
二人は同時に飛び出した
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作者名：朱鷺の砂 x他1人 | 作成日時：2019年8月1日 22時
