検索窓
今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:24,631 hit

失踪の真実 <弌> ページ25

車内は静寂に包まれている

「………坂口さん」

その静寂を破り、Aは隣に座る安吾に声を掛けた

「?」

「拠点に戻ったら直ぐに、ムルソーの状況を調べた方がいい」

「……何故です?」

「……………化物(けもの)が出たかも知れない」

冗談に聞こえるが、そう言ったAの顔は、嘘をついているようには見えなかった

そして、Aは窓の外を眺めた

人々が行き交う、均衡の保たれた街

その均衡を脅かす者があることを、誰も知らない

…………たった一人を除いては









天井、壁、床…全てが白い部屋

寝台と机、椅子…必要最低限の物しかない

その部屋の扉が開く

「入れ」

くぐもった声で特殊部隊の一人が言った

Aはそれに従い、部屋に入る

ガシャン カチャリ

途端に部屋の扉は閉められ、鍵が掛けられる

Aは人の気配を感じていた

扉の前に見張りが居るのだろう

それを気に止める様子もなく、Aは部屋を見渡した

三畳程の白い部屋には、超小型の監視撮影機と盗聴機が仕掛けられている

机の引き出しには何もない

寝台の下にも何もない

Aは寝台に腰掛け、仰向けになった



『Aの髪は長くて綺麗ね』

『母さんと同じだね!』

ーーーーーそんな会話をしたのは何時だったか…

『母さんはどんなお仕事をしてるの?』

『………そうね
Aが十八歳になったら、母さんの仕事、教えてあげる』

ーーーーー子供なら誰もがする質問だと思う

「母親は子のすべてを愛する生き物だ」

ーーーーーそれは間違っていないと思う
ただ、例外がいるだけ……母さんは、そっち側だった



ガシャン

扉の開く音が響いた

Aはその状態のまま、視線だけ扉に向けた

そこには安吾が立っている

「貴女、知っていましたね」

「………」

Aはそう言った安吾から視線を外さない

「貴女の云った通り、『ムルソー』の状況を政府権限で調べました
ある二人の囚人……太宰君とドストエフスキーが “失踪„ したそうです
……どういうことか、説明してください」

安吾の語気は強い

「…… “失踪„ ? “誘拐„ じゃなくて?」

Aはそう聞き返した

「………矢張、貴女もそう思いますか」

安吾がそう言うと、Aは起き上がった

失踪の真実 <弐>→←護送



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
28人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

朱鷺の砂 - 夏休み期間なので少し更新速度が上がります (2019年7月22日 22時) (レス) id: 137c29396a (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂(プロフ) - 誤字脱字などありましたら教えて下さい また、作中で分からないこと、分かりにくかったことなどもありましたら教えて頂けると幸いです 他にも、作品やキャラクターについての質問等も受け付けています これからもよろしくお願いします! (2019年6月28日 18時) (レス) id: 4484823ae6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2019年5月19日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。