友達 ページ42
“異能力の特異点„ で引き延ばされた世界で、織田とジイドはただ微笑んで向き合っていた
互いに向けられた銃口から弾丸が発射されていた
「サクノスケ、最後まで素晴らしい弾丸だ」
ジイドは笑った
銃弾は二人の胸を貫通し、二人は同じタイミング、同じ姿勢で仰向きに倒れた
「…………」
「？」
笑みを浮かべていたAから笑みが消えた
そしてAは窓の外を眺めた
窓からは、ポートマフィアの高層ビルが見える
「！」
そこで男は漸く気付いた
Aの左耳にイヤホンが付いていることに
Aは最初から本を読んでなどいなかったのだ
何かを言おうとAが口を開きかけたが、男はAの言いたいことを悟って部屋を出ていった
「……どうやら、後悔はないみたいだね」
「織田作！」
扉を叩きつけるように開いた太宰が織田に駆け寄った
「太宰……お前に云っておきたい事がある」
「駄目だ、止めてくれ…まだ助かるかも知れない、いや、きっと助かるよ…だからそんな風に」
「聞け
お前は云ったな…『暴力と流血の世界にいれば、生きる理由が見つかるかもしれない』と……」
織田は太宰の頭に手を置いて言った
「ああ、云った、云ったがそんな事は今」
「見つからないよ」
太宰は織田を見た
「お前の孤独を埋めるものはこの世のどこにもない」
太宰自身が思っているよりもずっと、織田は太宰を理解していた
「織田作……私はどうすればいい？」
「人を救う側になれ(････････)
どちらも同じなら、佳い人間になれ……弱者を救い、孤児を守れ
正義も悪も、お前には大差ないだろうが……そのほうが、幾分か素敵だ」
「何故判る？」
「判るさ…誰よりも判る……俺は、お前の友達だからな」
「……判った そうしよう」
「『人は自分を救済する為に生きている。死ぬ間際にそれが判るだろう』か……確かに、その通りだ……」
織田の手が、太宰の頭から離れた
それと同時に、太宰の右目の包帯が外された
Aはイヤホンを外し、窓の外を眺めた
船は既に出港していた
「……本当に、後悔は無いんだね…作之助」
景色を眺め、Aはそう言った
「『人は、自分を救済する為に生きている。死ぬ間際にそれが判るだろう』か……」
Aの付けていたイヤホンは、盗聴機の音を拾っていた
織田の見舞いに行ったあの時、太宰の部下の背広に盗聴機を仕掛けていたのだ
「(真逆、あの時仕掛けた盗聴機があるとはね……)」
船は露西亜へと進む
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2019年3月29日 15時
