条件と指示 ページ36
「貴女には、僕とある場所に来てもらいます」
「拒否権はないね……」
安吾の言葉にAはそう呟いた
「来てくれますね？」
「何処に行くか聞いても？」
「………会合です」
「会合？」
安吾の言葉にAは首をかしげた
「えぇ…マフィアと特務課の非公式の会合です」
「私がそれに行く必要性は？」
「貴女程の情報屋なら、両組織の情報から状況を把握することができる筈です………
中立の立場にいる貴女なら、裏切り行為を見抜き、立証することなど容易いでしょう」
安吾はAにそう言った
決して目の前の少女から目を離さない
「……成程…私は保険って訳か…」
Aは納得したようにそう呟いた
そして、
「但し条件がある」
青玉のような瞳に安吾を映して、Aはそう言った
「条件、ですか？」
「私だって、特務課がどんな組織か知らない程馬鹿じゃない
………条件は一つ…その会合が終わったと同時に私を解放すること」
「………」
Aの出した条件に、安吾は口を閉ざした
「この条件を飲まなければ、特務課の存在を世に知らしめる」
「！？」
Aの言葉に安吾は目を見開いた
少なくとも、十三歳の少女が発する言葉ではない
安吾は目の前にいるのが本当に少女であるのか一瞬疑った
「…………判りました
その条件、飲みましょう……但し、会合が終わる迄の間は此方の指示に従ってもらいます」
安吾はそう言うと、Aに向けていた銃を背広に仕舞った
路地裏を出たAは、安吾の用意した車に乗った
車はある港に止まった
そこには小ぶりの観覧船があった
その周辺には、黒服に身を包んだ者達がいた
「……(特務課…？)」
車を降りると、
「では、貴女の持っている武器や電子機器等を全て回収させてもらいます」
安吾がAにそう言った
「……まぁ、そうなるよね」
Aはそう言うと、拳銃嚢(ホルスター)の拳銃やナイフ、携帯電話、メモリーを安吾の隣に来た女のエージェントに全て渡した
「これで全てですか？」
「隠してたら後が怖い」
Aが安吾にそう言うと、
「念の為、ボディチェックをさせてもらいます」
女のエージェントがそう言った
Aは入念なボディチェックを受けた
「凶器等は何も持っていませんでした」
女のエージェントが安吾にそう報告した
「そうですか……では行きましょう」
観覧船へと乗り込む安吾の後ろを、Aは付いていった
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2019年3月29日 15時
