洋食屋のカレー ページ13
雨が止んだ
Aは、マフィアとミミックが銃撃戦をしていた裏路地に来ていた
短機関銃の無数の銃弾が建築物の外壁や地面にめり込んでいる
遺体も血痕も無い
「(非合法組織ともなれば、掃除も完璧か……)」
Aは辺りを見回すと、裏路地を出た
行き先は決まっていた
途中、店で土産用の菓子を買い、そこに向かう
Aはある店の前で足を止めた
そこは、あの時の洋食屋だった
店の戸を開けた
「あの時の嬢ちゃんかい？」
洋食屋の店主は、Aを見るなり笑ってそう言った
「あの時は…ありがとう」
「良いよ…座んな」
Aは言われた通り、カウンターの席に座った
「何か食べるかい？」
「お勧めは？」
Aが店主に聞くと
「此処のお勧めはカレーだ」
店主ではなく、別の男がそう言った
「！」
「織田作ちゃん、相変わらずカレーが好きだねぇ」
店主の代わりに答えたのは織田だった
「また喧嘩したか？」
「真逆」
織田の言葉にAはそう返した
「この前の礼をしに来ただけだよ」
「？…何かしたか？」
「………否、何でもない…それより、作之助は？」
Aが呆れたように織田を見ると、そう聞いた
「俺はカレーを食べに来た」
「うん……ごもっともな理由だね…」
そんな話をしていると、店主が二人の前にカレーを置いた
「「いただきます」」
鉄匙(スプーン)を使って一口、口に運ぶ
「！…美味しい」
「それは良かった」
「そうだ……これ」
Aはそう言って、先刻買ってきた菓子を店主に差し出した
「これは？」
「この前の御礼」
「別に良いのに…ありがとう」
店主が微笑して菓子を受け取った
ふと、Aが織田の方を見ると、織田は難しい顔をしていた
「………」
「織田作ちゃん、難しい顔してるねぇ…便秘かい？」
店主が織田に声を掛けた
「考え事だ…便秘ではない
もし俺が今便秘なら、カレーのような刺激物を食べるのは避ける」
「そう、まあそうね……織田作ちゃん、カレー食べてる時にそういう話題されて怒らないの？」
「そんなものか……怒るべきだろうか？」
「いや……判んないけど」
「こらー」
「無理しなくていいんだよ織田作ちゃん」
真顔で言った織田作に店主がそう言った
「フフッ」
二人の会話を聞いていたAは笑った
「「……」」
笑ったAを二人は凝視していた
「…何？」
凝視されていることに気付いたAはそう聞いた
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2019年3月29日 15時
