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赤い霧 ページ42

中原により龍が倒され、フョードルが特異点を作ろうとしていた時

敦は未だに六年前の記憶の部屋に立っていた

「すべて思い出した」

澁澤が唇を動かした
思い出した記憶
澁澤が欲していたのは、太宰の異能ではなく、敦の異能だった
何よりーーーーー

「私が本当に求めていたのは異能ではなく、己の異能に抗い、運命に打ち勝つ生命の輝き……君が見せた輝きだったのだ」

生を渇望する煌めき
それこそ澁澤の求めるものであり、それを感じることこそ、至上の喜びだった
歓喜の味を澁澤は初めて知った
澁澤は、目の前の敦に剥き出しの欲望をぶつけた

「私を殺して生命力を証明して見せた君の魂を……さあ、その輝きを見せてくれ」

澁澤の白い指がかたちを失い、長い白髪が消えていくーーーーー





記憶の部屋の澁澤が消えていくのに合わせて、ドラコニアでは、宙に浮く澁澤の髑髏を中心に、澁澤の体が形付くられていく

なめらかな白い膚を白い外套でつつみ、長い白髪をなびかせる
美しい容貌には、大きな爪痕が残っている
その額には赤い結晶が龍の角の如く輝く

龍の力を持ち、龍神とも呼ぶべき人外の異能的存在として蘇った澁澤
彼の意志は変わらない
澁澤は、生命とは追い詰められた限界でこそ強く美しく輝くと信じている
故に澁澤は、敦を追い詰め、痛めつけなければならない

だから澁澤は力を奮う
新しく手に入れた赤い霧を、世界に向けて振りまく

赤い霧が、世界を侵触しはじめた

「…………」

フョードルの笑みは、A以外に見られることはない





霧の範囲は拡大を始める
赤く染まった霧の監視をしていた特務課の通信室にけたたましい音が鳴り響く

「これは……英国の特務機関から通信コールです」

「!
時計塔の従騎士か」

安吾が身を乗り出す
即座に通信が繋げられ、液晶画面に『SOUND ONLY』と表示される

『ご機嫌麗しゅう……』

艶めいた女性の声
声の主は、ディム・アガサ・クリスティ爵
英国の特務機関『時計塔の従騎士』近衛騎士長

『欧州諸国を代表して、貴国の危機的状況に同情いたしますわ
つきましては、世界への霧の蔓延を未然に防ぐため、焼却の異能者を派遣してさしあげました』

彼女から告げられた終焉の知らせ

「焼却の異能者……!?
発動予定時刻は?」

『きっちり30分後
夜明けとともに…………』

安吾の問いにそう言ったアガサは一方的に通信を切断した

「……ヨコハマが焼かれる」

安吾の茫然とした声が、通信室に落ちる

異能を取り戻すのは…→←デッドアップル



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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ!頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます! (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです!小説面白かったです!更新頑張って下さい! (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2018年10月7日 18時

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