53.全身ゼンレイ目指シテ ページ17
「あの時何か言いたげだったけど
聞いてやるよ。」
「あ…はい！」
聞いてくれるという
大人な櫻井さんには
やっぱり正直に話しておきたい。
呆れられちゃうかもしれないけど…。
「実は…恋愛がよく分かってない私は
この前来た二宮せんせーたちに相談したんです。
"どうしたい？"の問いには
"カズくんが欲しい♡"だ！
って言われて…そのまま言ってしまいました。
ごめんなさい…。」
正直に言ったら
櫻井さんは小さなため息を吐いて
私の頭を軽く叩いた。
「まず、相談相手が間違ってる。
次に、人に言われた言葉をそのまま言っても
何も響かない。
だからお前が相談したことは
全くもって無意味だったってこと。」
「うっ…！」
本当に櫻井さんの言う通りすぎて
自分が情けなくてしょーがないです。
「お前の言葉でお前の思ってることが聞きたかった。」
そう言ってデコピンをする。
おデコの痛みより胸の痛みのせいで
目に涙が溜まる。
泣くな泣くな！
飲み込め！
私が悪いんだし
面倒くさい女は嫌われる！
と、自分に言い聞かす。
「で、お前はどうしたかった？」
「……。」
「正直に言ってみろよ。」
「櫻井さんに愛されたかったです…。
櫻井さんの中のイチバンじゃなくていいんで…」
「好きなの？俺のこと？」
「……。」
我慢している涙が溢れてきそう。
自分の言葉で
自分の思ってることを…。
「仕事を優先してくれればいいんです…
でも…私は櫻井さんのことが、好きです。
好きでいてもいいですか？」
精一杯、自分の言葉で。
迷惑を掛けないように。
私の全身全霊をかけた一世一代の告白に
櫻井さんは軽く笑い
それから
ぎゅううぅぅ…と抱きしめてくれた。
「俺たち夫婦なんだって。
それなのに好きでいてもいいですかって…
おかしいだろ？」
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2015年7月10日 22時
