48.ヒグラシ鳴ク夕刻 ページ12
カナカナ…
カナカナ…
遠くでヒグラシが鳴く声が聞こえる
陽も沈み始めていた夕方。
印象的なオレンジ色の空を
縁側でコテンと横になって
独り、見上げていた。
櫻井さんは結局
お昼ご飯には帰ってこなくて
今もこうして外出している。
今頃"アイバチャン"と…
プルプル！
もしそうだとしても
しょーがないです！
だって私は魅力の欠片もない
おまけに失礼極まりない妻ですから。
浮気されも文句は言えません…。
けど…やっぱり
仕事とはいえ休日に迷わず
他の女性のところへ行ってしまったという事実は
ヘビーだった。
「グスッ…櫻井さぁん…」
寝転んで空を見上げれば
涙は頬を伝うことなく
耳の後ろへと流れていった。
.
それからどれ位の時間が流れたのか。
周りを見れば結構な時間が経っていたのが分かった。
真っ暗。
「っひぇ！？嘘でしょ！？」
勢いよく起き上がると
あれ？
タオルケット…？
…櫻井さん？
周りをキョロキョロ見回してもその姿はなくて
ダイニングキッチンに灯りが点いてるのが見えた。
ダイニングキッチンに近づくと
櫻井さんの笑い声が聞こえてきた。
うそ…
"アイバチャン"連れてきたんですか？
きっとカワイイんですよ。
栗色の髪の毛をクリクリにして
モンブランみたいな甘さを纏った
栗ガールなんでしょ！？
そりゃドラム缶には敵わないお相手ですよ！
あぁ！ヤキモキ！ヤキモキしちゃう！
なかば半分怖いもの見たさで
恐る恐るダイニングキッチンを覗いてみた。
胸がドクンドクンいう。
昼間の心臓の鼓動とは違う
嫌な音だった。
…けど
あ、れ？
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2015年7月10日 22時
