５粒.好きな人 ページ5
あらん、あられ...あらぶ...。
やっぱり知らない、あんな人。
どうして私の名前を？
どこかで会った？
でもあんな目立つ人、一度会ったらそうそう忘れないと思うけど...。
そしてこんな暗い私を覚えてるはずもない。
いや、でもそんな私の記憶力がいいわけでもないけど...。
それにしても怖かったな、取り巻きっぽい人たち。
目つけられたらヤだなぁ...。
A「ハァッ...。」
思わずため息が漏れる。
くるみ「A。そろそろ手、離してくれる？」
A「！」
くるみちゃんの声で我に返る。
A「ご、ごめん！」
慌てて手を離すと、自分の手汗に気付く。
くるみちゃんは腕をさすりながら、もぅっと眉をしかめてる。
そしてふっと一息吐いて、あのアーモンドみたいな瞳が私を見据える。
くるみ「A...。
好きな人いるでしょ。」
A「...はぇっ！？」
くるみちゃんから発せられた予想外の言葉。
もしかして、佐野くんのことバレちゃった？
でも、誰にも言ってないし、もちろん気づかれないようにしてたけど...。
くるみ「当ててあげよっか？」
自信満々のくるみちゃんの瞳が、にんまりと孤を描く。
じとり、こめかみから汗が滲む。
私は何をこんなに慌ててるんだろう。
くるみちゃんは大切な唯一の友達なんだから、バレちゃっても別にいいのに。
私が佐野くんを好きなんて、おこがましいから？
それとも誰かにバラされるから？
ううん、くるみちゃんはそんなことしない。
正直に言おう。
そして少しわがままを言うなら、応援してもらいたいかなー...なんて。
A「やっぱり分かっちゃったかな...？」
くるみ「そーよ、分かりすぎよ！」
くるみちゃんは、なんでもお見通しと言いたげに胸を張る。
くるみ「ほら、じゃあAの口から言ってくれてもいいんじゃないの？」
A「う、うん...。私の好きな人はね...、」
その時、ふっと脳裏によぎったあの言葉。
─うちの友達、彼氏盗られたらしいよ。─
ドキリ、
心臓が跳ねる。
A「わ、私の好きな人は...、
白濱さん...だよ...。」
咄嗟に出た言葉は、自分でも驚くものだった。
慌てて訂正しようと口を開こうとするが否や。
くるみ「やっぱりねぇ〜！」
そうだと思ったの、と可愛いくウィンクするくるみちゃん。
ち、違う！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 88人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちご | 作成日時：2018年5月5日 22時
