４粒.亜嵐 ページ4
A「あの...、」
「亜嵐！」
「今からお昼？」
「一緒に食べよ！」
私の言葉を遮るように、女の子が次から次へと亜嵐さんの元に寄ってくる。
その中でも特に目立っているのは、さっきくるみちゃんの噂をしていた３人組。
亜嵐さんって、有名人か何か？
さっきまで平穏だった食堂に、ちょっとした人だかりができてる。
みんな、亜嵐さん目当てのようだ。
「亜嵐さん、私の作ったお弁当食べてみてください！自信作なんです！」
一見大人しそうな女の子が、顔を真っ赤にしてお弁当を差し出す。
亜嵐「マジ？サンキュー！」
亜嵐さんは、女の子が差し出したお弁当の中身を見て卵焼きを取り出し、ヒョイっと口の中へ運ぶ。
亜嵐「うん、美味い！ありがとう！」
「い、いえ...！」
女の子の顔はもう林檎のようにまっかっか。
パタパタと去って行き、後ろで見守っていたらしき友達が、良かったね、なんて口々に喜んでいるのが聞こえる。
こんなチャラそうな人の、どこがいいんだろう。
いや、チャラそうってのは、私が勝手にそう思ってるだけだけど...。
A「くるみちゃん、もう行こ...お？」
さっきまで、うどんを啜ってたくるみちゃんの姿がない。
えっ、もう帰っちゃった？
声かけてくれればいいのに、とぼそっと嘆く。
「だよね〜！」
ん？
この声は...。
慌てて後ろを向くと。
くるみ「亜嵐くんも犬飼ってるんだ！私もだよ！」
そこには、亜嵐さんとお喋りしてるくるみちゃんの姿が。
ヒィッ...！
あの３人組が、くるみちゃんをジトーと睨んでる。
それはもう今にも、背後からくるみちゃんに噛み付かんとするような感じで。
A「く、くるみちゃん！もう行こ！予鈴鳴るよ！」
くるみ「えー。もうちょっと亜嵐くんと喋りたい！」
その言葉に背後の３人組の、負のオーラが凄まじいことに...。
A「次、移動教室だから早めに行かないと！」
そう言って、駄々をこねるくるみちゃんの腕を一生懸命に引っ張り、３人組から少しでも遠くに連れて行く。
くるみ「あーもう！亜嵐くん、ばいばい！」
亜嵐「ばいばーい。くるみちゃん。
と、Aちゃん。」
...なぜ私の名を。
思わずくるっと振り返ると、亜嵐さんがニコニコと手を振っていた。
あの３人組が思い切り睨みつけているのが目に入り、急いで踵を返し、くるみちゃんを引きずった。
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作者名：いちご | 作成日時：2018年5月5日 22時
