30.secret and test ページ30
ノニさんの部屋は、
私と同じ日に同じように身ひとつで転がり込んできたものだから物はなくてベッドがあるだけの殺風景なお部屋。
そのベッドに熱でグロッキーなノニさんを寝かせる。
「今、お薬持ってくるんでこのまま待ってて下さいね。」
「ん…。ありがと…。」
一度部屋を出てキッチンに向かおうとすると、
「あ。」
「わ！」
スウェット姿の櫻井さんと鉢合う。
櫻井さんは目をパチパチ。
ノニさんの部屋と私を交互に見て言う。
「え…なに？
まさか夜這い？」
「ちがっ…違いますよ！！」
きゃーって手で顔を隠してニヤニヤするから
慌てて全力否定。
「ノニさん、熱出しちゃって…。
お部屋に運んできたところです。」
「え？そうなの？
大丈夫？」
「と、本人は言ってますけど…。」
一瞬触れたおでこはそんじょそこらの体温ではないことを物語ってた。
「ちょっと様子みてくるわ。」
「あ、はい。
私はお薬を取ってきますね。」
「それならロキソニンってやつ持ってきてくれる？」
「わかりました。」
トタトタと急ぎ足で取りに行く。
キッチンのパントリー内にある救急箱からロキソニンを見つけコップ一杯の水も持ってノニさんの部屋へ戻ろうとした時、
半開きになっていた櫻井さんの部屋の前で足が止まった。
まさか…あの女の人、いないよね？
………。
いやいや！
いた所で何？って話。
メイドの分際でご主人様の色恋沙汰に首を突っ込むなんて野暮ってもんでしょ。
何を確認しようとしてんのよ、私は。
…そう思いとどまったのに、
この足はまだ動こうとしない。
櫻井さんの部屋の隣はノニさんのお部屋。
ノニさんのお部屋の扉も開いていて2人の会話が聞こえてきたからだ。
「見られた…って、何て誤魔化したの？」
「いやー、向こうが口を噤んだから。何も。」
「それ、変な勘違いされてない？」
「まあ、それならそれでいいんじゃない？
それよりもまだ正体は知られたくない。」
「ん、まぁ…そうね。
まだ様子見てみたいよね。」
「で？明日の仕事、大丈夫なの？」
「大丈夫じゃなくても休めないでしょう。」
「無理すんな。」
「無理しますよ。」
盗み聞きなんて。
そう思ったけど聞いてしまったのは
2人がおそらく私の話をしていたからで…
おかげでハッキリと分かった。
彼らが自分の素性を隠したがっていることと。
やっぱり私は何かを試されていることを。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2017年11月27日 18時
