干物女、恋愛するってよ。3 (ページ38)

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109.恋のスコールページ38

自転車のタイヤが水溜りに入ると
大きく水しぶきを立てる。

それくらい短時間で大量の雨が降ったのに
空にはもうお月様が黄金色に輝いていた。

「日本の気候も熱帯化してんな。」

「降り方が南の島のスコールだよね。」

「すげーなA。
南の島行ったことあんの？」

「いや、ねぇっす。
憶測だけで語ったっす。」

「んはっ！憶測はいかんな。
ちなみに俺も行ったことねぇっす。」

「あ、知ってます。」

んははーっていつもみたいに笑うから
サトチの背中が揺れるのを後ろで感じる。

好きだな。

この空気。

サトチは干物女の乾いた心を潤してくれる。

オアシスみたいな人だ。

やっぱり好きだな。

この人を。

サトチへの気持ちを再確認しながら
アパートに到着。

荷台から降りてお礼を言う。

「ありがとサトチ。
いつもいつもごめん。」

「なんで謝る？
ありがと、だけでいいよ。」

「じゃあまたチョコあげる。」

「マジか！ありがてぇ！
でも本社に行ったらそれももう無くなるのかー。」

サトチがふふっと笑って自転車を来た道の方向へ向けると

そこに…

「あ。翔くん。」

仕事帰りのお隣さんが立っていた。

「…何してんの？」

「あ、サトチにね、
あ、えっと、サトチは開発部の…

「おおの…さとし。」

へ？

翔くんにサトチの紹介をしようとしたのに
私が言う前に翔くんはサトチの名前を小さく呟いた。