87.ガーターベルト ページ16
「社長！！」
「ん？」
あれはトリンドルからの不器用なエールだと
自分の都合の良いように受け取ったけど
結局あそこにはもう私の居場所はないってことで
今後の選択肢は一つしか残されていない。
もう、しょうがないよね。
「人事の件ですが、
謹んでお受け致します。」
「本当？」
「ただし条件が。」
「びっくりした。
条件って…誰に向かって言ってんのよ？」
「私に1ヶ月ください。
新入社員に私の仕事の全てを引き継ぎますので。」
干物女は仕事真面目。
ビールの為だけど。
それだけは自分で自分を褒めれる。
「1カ月でできんの？」
「してみせます！」
私が居なくなっても困らなくとも
それだけはしっかりやっておきたい。
少しでもトリンドルに負担を掛けないように。
「了解。
じゃあ1カ月後の5月1日から正式に秘書課に移動ってことで。」
社長がニヤリと笑う。
もう、どうにでもなれってんだ。
「じゃあ秘書に必要なアレ買いに行かなきゃね。」
「必要な、アレ？」
「秘書と言ったら網タイツにガーターベルトでしょ。」
「それ、どこのお店の秘書ですか？」
「知らないの？
相葉氏だってズボンの下は
網タイツにガーターベルトよ。」
「マジですか！？
それは是非ともお目にかかりたい！」
「ちょちょちょ、俺してないよ！
それ誰得っ！？」
「そういうワケでちょうど着いたよ。」
「ん？」
相葉さんのガーターベルト疑惑が浮上して間もなく。
車は高級ブランドのお店が建ち並ぶ
銀座のど真ん中で停まった。
「ほらガーターベルト買いに行くよ。」
「え？だって、ここ…」
先に車を出た社長に続き
場違いな私も車から出て見上げたそのお店は…
クリスチャン・ルブタン。
…て、あのトゲトゲの？
「ルブタンに何の用ですか？
北斗の拳のキャラになりたいんですか？
世紀末ですか？」
「それならお前はすでに死んでる雑魚キャラな。」
「相葉さん呼ばれてますよ。」
「ええっ！？流れ弾喰らった！ひでぶー！！」
そうこうふざけてる間に
社長はドカドカとお店に入って行って
店員さんに声を掛けてから私を手招きした。
え？ホントにガーターベルトじゃないよね？
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2016年6月5日 0時
