干物女、恋愛するってよ。2 (ページ8)

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43.ムンクの叫びページ8

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20時過ぎ。

ようやく仕事から解放された。

椅子の背もたれに凭れて
大きく伸びをする。

「ッんーーーー、はぁ！！」

終わった。

ただ、こんなに疲れても今日はまだ木曜日。

週の中でイッチバン冴えない曜日だわーって
モチベーション上げるために
ご褒美・矢沢のAちゃんビール買って帰ろう！
おつまみは…
そうだ、サラミにしよう。

なーんて干物女はこうやって簡単に気持ち切り替えることが出来る。
単純な生き物よ。
あー、でも、幸せー。

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「おっ疲れ様でーす！」

元気よく事務所をあとにして
そりゃもうウッキウキで
会社から外へ出るとふっさーって髪の毛が風になびく。

寒い寒い。

トレンチコートの襟を立てて
肩を摩りながら足早に帰ろうとすると

歩道の横につけている真っ黒でピッカピカな高級車に凭れてタバコを吸っている人が視界に入った。

ハッキリと姿は見えずとも本能で感じる。

その人の危険なニオイ。

その人は一歩、二歩と後ずさりをした私を見てか
タバコの火元を下に向けると運転席から出てきた人が灰皿を差し出しタバコの火を消してこちらに向かってくる。

ああ、まずい…
逃げなきゃ！！

咄嗟に走り出す私に

「おい！ふざけんなよ！
待ちやがれ！！」

大きな声をあげて追いかけてくる。

社長だ！

やっぱりビンタは無かったことにはならなかったんだ！

「ひぇッ！」

ヒールを履いてる私が逃げ切れるわけもなく
首根っこを押さえされ呆気なく捕まった。

「はい、お仕事お疲れ様ー。」

棒読みで労いの言葉。

「うげげー！シャチョ！
痛い！痛い！
これ、大根おろしぃ！」

ずるずると引きずられながら高級車の後部座席に無理やり入れられる。

「あ、お疲れ様です桐島さん！」

さっき灰皿を出していた運転手、秘書の相葉さんが
芸能人のような白い歯を輝かせて爽やかに挨拶するけどさ！

これ！
どう見ても拉致現場よ！？
爽やかに挨拶してる場合じゃないのよ！？
歯が眩しいよ！

社長は私を奥に押し込んで自分も後部座席に乗り込む。

それから高そうなロングコートを雑に脱いで
あろう事か私のトレンチコートまでも無理やり剥ぎ取る。

「なっ、何するんですか！？」

「言うこと聞くっつったでしょ？
なら今すぐ脱ぎなさいよ。」

やっぱり！！
そっち系のイイナリなわけ！？

思わずムンクの叫び。