44.恋人契約 ページ9
「じゃ、相葉氏。
向かってくれる？」
「リョーカイっ！」
色々とワケが分からないまま
私を乗せた車は動き出す。
色々ってのは…
まずはこの手！
隣に座ってる社長が
何っていうのコレ？
ああ、そう。
"恋人繋ぎ"ってやつかしら？
こう…指を指の間に入れて握られる。
それで
ぎゅうーって手を握られてんの。
どういうつもりだ、チミは！？
だってビンタしたこの手をこんな握り方するなんて。
「見過ぎ。
顔に穴開ける気かよ？」
「できれば。」
「どういう意味だ？
あ、もしかしてコート脱がされただけなのが
拍子抜けだったとか？
恥かかせてごめんねー。
でも物足りないのなら後で相手してやるよ。」
片方の口角をギィって上げて
じりじりと顔を近づけながら悪ーい顔で笑う。
ゲスの極み、社長。
「もうっ、あんまりイチャつかないでよね？
俺、一応仕事中！」
「一応って何だよ。
完全に仕事中なんだから
社長の色事には首を突っ込まないで下さいー。」
「ひゃっ！怒られちった。」
次にこの秘書の相葉さん。
トリンドルの言ってたイメージと全然違う。
『丁寧な言葉遣いでクールにね、
分厚い手帳片手に電話してる姿とか！
もうっ、大人の男性って感じー♡』
言葉遣い…ねぇ？
タメ口だけど。
それも社長相手に。
おまけに大人な男どころか
少年のように見えますが？
ワケが分からない。
私がこの場にいるのも。
ぜーんぶ。
「ふは！
そんな怖い顔しないでよ。
今日はね約束通り、
言うことを聞いてもらおうと思ってね。」
怪訝な顔をする私に気付いた社長が
甘えた声で小首を傾げながら言う。
コテン…って。
なにそれ、可愛いすぎでしょ？
確実に私より女子力高いわー。しくしく
「契約してくれる？」
「契約？」
「そ。恋人契約。」
ニッコリ天使のような微笑みを浮かべてるけど。
こいびと…けいやく…？
って、なに？
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2016年3月24日 22時
