53.殺し屋は一瞬の隙も見逃さない ページ18
さすがは高級料亭。
前菜盛り合わせ
お造り
焼き物と。
日頃滅多にお目にかかれない豪華な料理が
次々と運ばれてくる。
見た目も、お味も◎
はうっ！
幸せ…。
そんな中お部屋では
メタボが芸妓さんとお座敷遊びを始めていて
鼻の下を伸ばしながらそれはそれは上機嫌なご様子。
翔くんも社長も相葉さんも
こういうのに慣れた様子で手拍子してる。
それを見て食べることに夢中だった私も
慌てて箸を置き
みんなに合わせた。
とらと〜ら、と〜らとら♪
って、何が面白いんだろ？
首をかしげる私を見て社長が笑う。
「ふはっ！
食べてたいって顔に書いてある。」
「ぐぬぬ…ここは、我慢です！」
「無理すんな。
あ、ほら。
お前の本命が来たぞ？」
社長の視線の先には
天ぷらの盛り合わせを運んできた女中さんがいた。
きたきたきたきたー♡
目の前のお膳に置かれた彩り鮮やかな天ぷらの盛り合わせは、もはや芸術作品。
食べたい！でも…
食べたい！でも…
食べたいー！！
「ぐふっ！
ヨダレだくだくの犬か？」
何をー！？
失礼な！！
犬顔の人に言われたくないよ！
でも、社長の左手には
おっきな海老の天ぷらが。
うっ…、食べたい…。
「お手！」
「わんッ！」
ああああ！
食べ物に吊られた！
「よーし、いい子だ。」
顎をコショコショ。
完全に犬扱い。
でも海老の天ぷらを差し出されるから
唾を飲み込み
目を輝かせて
あーんって口を開ければ…
「ん、！？」
海老の天ぷらが口の中に入る直前
滑り込んできたのは社長の薄い唇。
一瞬だけ触れて
すぐに海老の天ぷらが入ってきた。
ホント、一瞬の出来事。
だから部屋の中は何も無かったかのように
メタボは相変わらずお座敷遊びに夢中で
相葉さんもメタボ嫁も笑いながら手拍子してる。
そう、一瞬すぎて誰も気付かなかった。
ただ1人。
殺し屋のような目つきでこちらを見ている翔くんを除いては。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2016年3月24日 22時
