34.シャチョー ページ34
サトチが応急処置をしてくれたトリーバーチのパンプスは修理に出してて
今日は適当に買った履き慣れていないパンプスで来ていた。
そこにあぶない刑事ごっこ。
しかも1人なのに全力で恭平走り。
長い廊下に後ろから飛び交う銃弾を避けながら(っていう設定で)走る。
右腕に銃弾がかすって(っていう設定)
あと少しで廊下の突き当たり。
ここを左に曲がれば犯人(サトチ)がいる！
…て、とこで
「ッああ！！！」
慣れないパンプスのせいなのか…
思いっきりつまづいてしまった。
持っていたコップとチョコレートが
弧を描くように飛んでいくのがスローモーションで見える。
あかーん！
それだけは！！
必死に手を伸ばしサトチへのプレゼントは見事にキャッチ。
でも。
バタン！
「ゔッぐ！！！」
私の身体は綺麗な大の字を描いて
廊下に倒れてしまった。
膝くらいあるタイトなスカートに
ビリッとスリットを作ってまで。
「いったぁーーーい"！！」
半べそをかきながら
すぐさま顔を上げると
「…何してんのよ？」
深みのあるブラックにシャドーストライプが施された洗練されたデザインのスーツ。
ピッカピカに磨かれた高そうな革靴。
それに呆れたような声。
「…しゃ、ちょ…。」
我が社の頂点に君臨する二宮和也。
その二宮社長がズボンのポケットに手を突っ込んで
大の字になってる私を冷たい目で見下ろしていた。
それはそれは私を冷たく見下ろす二宮社長の顔を
こんなに間近で見たのは初めて。
下がり気味の眉毛に
冷たく細めた目の下には
ぷっくりとした涙袋。
筋の通った鼻。
への字に曲げた唇の両端は上がった口角。
だからこれは正確に言うとwだ。
翔くんとは違ったタイプのイケメンだ。
「だから。
何してんの？」
「えっと…」
言えない。
1人であぶない刑事ごっこしてた、なんて。
どちらかと言うと
社長の方が取り調べ室の鬼刑事の様な顔してるし。
「うちの会社はね
仕事中に廊下で寝る社員なんて雇ってる余裕ないの。」
「いや！あの！
胸が大きすぎてバランスを崩し
受身を取ってましたでありんす！」
言い訳、下手か！？
日本語、下手か！？
私の訳のわからない言い訳に
もちろん社長は眉間に皺をよせ
はぁ？みたいな顔をする。
ははー。
そりゃそうだ。
ヤバイ。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2016年2月24日 22時
