25.生きるための本能 ページ25
「ただ…？」
「欲しいものがある。」
「欲しいもの…？」
「うん。欲しいもの。
それを手に入れるために
こんな生活。ふふ
ビックリした？」
「う、うん…。
だっていつも高そうなスーツ着てたりしてるから。
それにみんなサトチは高級マンションに住んでるって噂してるよ。」
「そうなの？
噂って面白れー。」
ふにゃふにゃ
いつもみたいに優しく笑う。
自分がどう言われてるのか
興味ないみたい。
私はサトチの本当の姿に興味津々だからね。
すかさず質問を続ける。
「その身につけてる高級品は…
その…
サトチは…
やっぱり…」
「んー？」
「夜はホストクラブとかで働いてるの？」
「え？」
草の選別に夢中だったサトチの手が止まった。
「俺が？ホスト？」
「うん！」
「んははははは！！
ナイ、ナイ！
さすがに開発部はそんな暇じゃない！
ぶっふ、ははははは！！」
サトチは大爆笑。
「だって飲み会を断った理由にもなるし。」
「違う違う！
飲み会なんて行ったら
役職ついてる俺が奢らないといけないでしょ？
俺、金使えねーもん。」
「それだけ？」
「それだけ。」
「じゃあ、誰かが嫌だとか
そういうのではナイわけね？」
「俺、製造部のみんな好きだよー。
チョコレートの匂いがするもん。」
そこかい！？
あ…
なるほど…
そういうこと？
チョコレートありきの私たち。
この人にとって私たちは
チョコレートに付いてくるおまけなんだ。
チョコレートがあって
私たちとの関係ももれなく付いてくる。
製造現場に足繁く通うのも
チョコレートという食料にひきつけられた結果。
もはや、生きるための本能だ。
サトチ…
私、本当に餌付けしてたとは思ってなかったよ。
サトチとチョコレート工場と貧乏生活の関係性が
なんとなーく分かって
自分がチョコレートのおまけってことに
なんとなーくモヤモヤする…。
なんとなーーく、だけどね。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2016年2月24日 22時
