いちごとすずらんが咲く頃に

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時計の針がてっぺんを指すくらいだろうか。

足取りが覚束無(おぼつかな)いまま、ふらりふらりと街灯の明かりも人通りもまばらな道を歩く女が1人。
…酔った。


不可抗力ってやつだ。


今日は会社の新人歓迎会だった。
だから歓迎される立場の私達新人は、上司に歓迎と称してお酒を次々と注がれてしまう。

その結果だ。


｢うっ…気持ち悪い…｣

ビール好きじゃないのにあんなに飲まされたせいで吐きそうだ。


道端で吐く女ほど醜い姿は無いだろう。
思い描いてた大人の姿とは随分違うなぁ…そんな事を思いながら立っていられずしゃがみ込んだ。

でもなかなか吐けず、しばらく嗚咽を繰り返しながら、息を切らしていると突然背中に熱を感じた。

｢大丈夫？｣

聞き覚えのある声なような、違うような…でも今の私には背中をさすってくれてるこの人を見上げる力すら持ち合わせてない。


｢だ、だいじょぶ……くないで…す。｣

微かにこの人が笑った空気を感じた気がした。

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